袋井市に住む中国籍の男子高校生に暴行を加えてケガをさせた上、車のトランク中に監禁し、浜名湖に投げ捨て溺死させた罪に問われている22歳の男の裁判員裁判で、静岡地裁浜松支部は懲役17年の実刑判決を言い渡した。

高校生に激しい暴行…そして殺害

判決を受けたのは浜松市に住む無職の男(22)で、2024年2月、フィリピン国籍の男(当時18)と共謀し袋井市に住む中国籍の男子高校生(当時18)に暴行を加えてケガをさせた上、車のトランク内に監禁し、浜名湖に投げ捨て溺死させた傷害・監禁・殺害の罪で起訴されていた。

遺体発見現場の近くを調べる捜査員(2024年2月)
遺体発見現場の近くを調べる捜査員(2024年2月)
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これまでの裁判で、事件に至ったきっかけは知人宅で男子高校生を含む8人で酒を飲んでいた際、男子高校生が年上である共犯の男に敬語を使わずに話しかけ、注意されたにも関わらず、その後も“タメ口”で話し続けたことから共犯の男が怒りを増幅させたことだったと明らかにされていて、その後、男子高校生がその場にいた被告の知人と口論になり、止めに入った女性を倒したことから共犯の男が男子高校生に暴行を加え、被告も加勢するに至ったという。

遺体発見現場の近くを調べる捜査員(2024年2月)
遺体発見現場の近くを調べる捜査員(2024年2月)

犯行は苛烈を極め、男子高校生の額や目が大きく腫れ、顔が血だらけになるなど多数回にわたる激しい暴行で、途中から昏睡に近い状態で抵抗もガードもできなくなった状態でもなお手を緩めることなく、2人がかりで一方的かつ執拗に手を下していた。

暴行は男子高校生が謝った後も続いたと見られている。

裁判長は“主従関係”を否定

こうした中、地裁浜松支部の来司直美 裁判長は6月13日の裁判で、「強度の暴行、危険な態様による監禁及び残酷な殺害方法に鑑みれば、各犯行態様は総じて極めて悪質。湖面に男子高校生を落としたら死亡することを確実に認識しながら落としており、殺意の程度は強い」と指摘した。

また、裁判の中で弁護側は「共犯の男に頼まれた上での犯行で積極的な殺意はない」と主張していたが、「共犯の男に男子高校生への暴行を指示したり、湖面に投げ入れる方法を提案したりするなど主体的に各犯行を行ったと評価できる」と退けている。

さらに、「友人である共犯の男を失望させたくなかった」と述べていたことについては「被告は共犯の男よりも年上であり、兄のように慕われる関係であったことや動画に記録された会話の内容からすれば恐怖心の程度はそれほど大きいものとは言えず、共犯の男に従わなければ自身が加害されるおそれがあるという程度の恐怖心を抱いていたとは認められない。被告の思いは身勝手な考えで、意思決定に対する非難の程度を弱める事情とは言えない」と断罪した。

一方で、被告が罪を認め、反省の弁を述べていることは有利な情状として求刑を1年下回る懲役17年の判決を言い渡している。

最後に来司裁判長が「あなたは当時17歳の被害者に対し傷害、監禁、そして殺害をしました。あなたは自分自身の怒り、捕まりたくないという身勝手な思いから自分の意思で判断し、犯行に及んだのです。その責任の重さを自覚した上で、それに見合った刑罰をこれから受けてください。そして、社会復帰して(事件直前に生まれた)自分の子供に会う機会があったら、同い年くらいの子を手にかけ、未来を奪ったということを一生抱えて生きてください」と説諭すると、被告は裁判長をまっすぐ見つめ耳を傾けていた。

共犯の男の裁判は6月23日から地裁浜松支部で開かれる予定となっている。