配電盤などの金属の箱と扉をつなぐ「蝶番」を主に製造・販売している町工場が、自社製品をモチーフにしたオリジナルグッズを販売し評判を呼んでいる。その裏に込められた思いとは?
「一軸入魂」の蝶番がモチーフ
キーホルダーにメモ帳、さらにはクリアファイルにマスキングテープ。
一見すると普通のアクセアリーや文房具のようだが、実はデザインのモチーフとなっているのはいずれも開き戸などに使われる「蝶番」だ。

これらの商品をイベント会場で販売しているのは伊藤金属総業の社長夫妻。
静岡県伊豆市にある伊藤金属総業では、配電盤などの機械を収める金属の箱と扉をつなぐ「蝶番」を主に製造・販売している。

長年蝶番を作り続け、年間の出荷数は約100万個。
様々な注文に応じて、図面通りに製品を作るだけではなく、見えない部分にまで心を込めたモノづくりを大切にしていて、工場に掲げられたモットーは「一球入魂」ならぬ「一軸入魂」だ。
伊藤徹郎 社長は「蝶番というのは丸い部分に軸が入って製品になる。この丸い部分を極力“円”に近づける、そんなこだわりを持ってやっている」と品質の高さに自信をのぞかせる。
街の至る所に使われているものの、普段はその存在をあまり意識することがない蝶番。
こうしたことから伊藤社長は工場の見学会を実施しているほか、製作体験も積極的に受け入れていて、見学会と製作体験は伊豆市のふるさと納税の返礼品にも登録されている。

伊藤社長は「我々としてもこんな仕事をやっている、モノ作りはこんな素敵な仕事だということを伝えたい」と話し、「町工場や蝶番に光を当てたい」との思いを抱いている。
高校生のアイデアも取り入れたデザイン性の高さが人気
こうした中、地元の高校生が出したアイデアをもとに生まれたのが「蝶番」をデザインしたトートバッグ。

若い世代の柔軟な発想に触発された伊藤社長はその後も社員の意見を取り入れながらグッズ開発に着手し、現在「CHOUTSUGAI MANIA-GOODS COLLECTION」と名付けた7種類の商品を展開している。
伊藤社長は「普段工場で作っている品物は直接お客さんが手に取って買ってもらうということがなかなかないので、イベントで直接我々が考えたものを手に取ってもらい喜んでもらえるのは本当にうれしい経験」と口に市、週末には精力的に販売会を開催。
この日出店したイベントにはSNSなどを通して取り組みに興味を持った人も遠方から訪れていた。

東京から来たという人は「何か自分で創作していくことにすごく興味があり、素晴らしいなと思う」とわざわざ足を運んだ理由を明かし、別の来場者は「すごくかわいいなと思った。小さなハートが隠れているのもかわいいなと思った」とデザインが気に入った様子を見せた。
人と人をつなげる「蝶番」
さらに、新たな取り組みとして工場の近くにある福祉施設で障がいのある人たちが手作りした籠やバッグとコラボした商品の販売も始めている。

伊藤社長は「蝶番は柱と扉をつなぐものだが、蝶番のおかげで我々もいろいろな人や物とつながることができて本当に感謝するしかない、そんな存在。グッズももう少しいろいろ考えたいと思うし、いずれ本業の仕事にもつながるようなPRできればいい」と改めてこの取り組みの意義を強調する。

2025年で創業からちょうど80年。
町工場が培ってきた技術と歴史は「蝶番」がきっと明るい未来とつないでくれるはずだ。
(テレビ静岡)