■上映会に仕掛けられた「爆弾」演出

Netflix独占配信中の映画「新幹線大爆破」の上映会が仙台市で開催された。イベントの最後、スクリーンに映し出された映像に会場からどよめきの声があがった。見慣れた仙台駅前の建物が次々と「大爆破」していく映像である。「以前も仙台を吹き飛ばした」という樋口真嗣監督の爆弾発言とともに、取材から見えてきた人気爆発中の映画の裏話を紹介したい。

仙台放送
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■次々と大爆破されていくJR仙台駅前

5月18日、ホテルメトロポリタン仙台で開催された樋口監督のトークイベント。イベントのエンドロールとして流れたプロジェクター映像は、映画同様、衝撃的だった。会場のホテル外観が映し出された瞬間、突然「大爆破」したのである。

大爆破するホテルメトロポリタン仙台
大爆破するホテルメトロポリタン仙台

■炎上してしまうのでは…?

次の瞬間、今度はエスパル仙台のビルから激しい炎が上がった。もちろん映像はコラージュである。しかし、笑っていいのか分からない。むしろ、これを放送してしまったら「炎上してしまうのでは?(爆破だけに)」と焦ってしまう。取材後、報道デスクに相談したところ「これ、公式の映像だよね?とは言えオンエアはできない」と、結局、そのシーンの放送はお蔵入りになってしまった。

大爆破するエスパル仙台
大爆破するエスパル仙台

■JR東日本「粋に感じた」

JR東日本は、楽しんでもらうための「演出」として映像を制作したという。こうしたJRのノリノリな姿勢は、仙台駅新幹線改札口を出たところでも目にすることができる。「新幹線大爆破」の巨大吊り広告だ。宣伝とは言え、これから東北新幹線を利用する客は「ドキッ」とするに違いない。JR東日本は「エンタメで東日本を盛り上げようという映画を“粋”に感じた」として全面協力したという。

仙台駅の巨大広告
仙台駅の巨大広告

■宮城県知事「爆破してくれて感謝!」

イベントでは宮城県知事も登壇。「東北新幹線はやぶさが爆破されて、喜ぶのは変な話なんですけど、見事に爆破してくださったので本当に感謝しています!」会場からは、どっと笑いが起きた。この発言も炎上しかねないか心配だったが、知事は観光の「起爆剤」になると期待を込めていた。「映画を見た人が東北に足を運ぼうかなと思って、実際に来ていただくと本当にありがたい」

イベントで登壇した宮城県知事
イベントで登壇した宮城県知事

■仙台駅周辺のロケ地でも「人気に火」

実際、ファンが映画のロケ地を巡る「聖地巡礼」のために、ちょっとした粋な計らいも用意されている。仙台駅東口にある「ヨドバシカメラ仙台」の屋上駐車場では、猛スピードで通過する東北新幹線の様子をテレビ各局が生中継するというシーンが撮影された。駐車場の一画には、ロケ地を示すステッカーが貼られている。

ヨドバシカメラ屋上駐車場のステッカー
ヨドバシカメラ屋上駐車場のステッカー

あの曲の「大爆音」に困惑

屋上駐車場では手に汗握る緊迫したシーンとは裏腹に、お馴染みのあの曲が撮影スタッフを困惑させたという。「広いな大きな楽しいな♪親切丁寧うれしいな♪」ヨドバシカメラのテーマソングである。エキストラで協力したせんだい・宮城フィルムコミッションの米倉風花さんは笑い話として教えてくれた。「常時ヨドバシカメラの音楽が流れていて、撮影時には止めないと、ということで慌ててスピーカーに毛布を巻きました」

提供:せんだい・宮城フィルムコミッション
提供:せんだい・宮城フィルムコミッション

■仙台駅「大爆走」は違うシーンになっていたかも?

樋口監督は“幻のシーン”について明かした。「仙台駅のペデストリアンデッキに人がわーっといて、その向こうを新幹線が走り抜けていくというのをやろうとしたんですけど…」確かに仙台駅の新幹線ホームはガラス張りとなっていて、野次馬が殺到するシーンを撮るのにうってつけだ。しかし、もしも本当に爆弾を積んだ新幹線が通過するとなった場合、警察から「ペデストリアンデッキを封鎖して、人は入れないようにする」と見解が出されたという。樋口監督は「じゃあ、規模がでかい撮影はやめましょうとなった」と悔しそうに話した。

仙台駅ペデストリアンデッキから
仙台駅ペデストリアンデッキから

■樋口監督「仙台出禁」に?

さらに樋口監督はこんな裏話を大暴露した。「仙台というと、1996年に映画『ガメラ2 レギオン襲来』でこの町を根こそぎ吹き飛ばした。それ以来、出入り禁止になっていたのですが…」それから30年近く経ち、ロケハンのため仙台を訪れたという樋口監督。「タクシーの運転手から、お客さん映画監督なの?昔ガメラって奴がこの町を全部吹き飛ばしたんだよねと言われて、何も言えなかった…」

仙台のイベントに登壇した樋口真嗣監督
仙台のイベントに登壇した樋口真嗣監督

■「線路のカーブがすごくよかった」

今回、劇中で仙台が大爆破されることはなかったが、「非常に重要な場所」だと樋口監督は強調する。「印象的だったのは、仙台市立病院から撮影した仙台駅方向の大きな線路のカーブ。東北新幹線の線路は時速320キロの営業速度を出すために、基本的に真っすぐでなければいけない。それが唯一曲がっているのが仙台。そのカーブによって実際はスピードを出せないかもしれないが、そこは映画のウソとしてスピードを出せばいい。列車はカーブを走るのが一番かっこいい。その大きなカーブがすごくよかった」

(c)Google
(c)Google

■「利府の名前を全国区にしたい」

宮城では大きなカーブとともに物語が大きな曲がり角を迎える。樋口監督は「利府町には、新幹線総合車両センターという東日本で車両整備を一括でやっている拠点がある。映画では全面的に事件の解決に向かって活躍する場所。映画は利府無しではありえない、利府という名前を早く全国区にしたい」と熱く語った。

宮城・利府町の新幹線総合車両センター
宮城・利府町の新幹線総合車両センター

■「仙台にはひどいことばかりしてきたが…」

最後に、樋口監督が宮城のファンに向けてメッセージを送った。「宮城県、特に仙台には、いろいろひどいことばかりしてきたが、それもひとえに“愛情表現の裏返し”と思っていただきたい」

報道陣の囲み取材に応じる樋口監督
報道陣の囲み取材に応じる樋口監督
仙台放送
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