子供の育成と地域の交流を目指して様々な支援が模索されている「子ども食堂」。フリースクールの子供達が食堂の調理を担当しながら、自分の居場所や社会との関わりを学ぶ取り組みが注目されている。

子供達が「子ども食堂」の調理担当

福岡・春日市にある「子ども食堂」。キッチンの奥では、エプロンをつけた子供たちが調理をしていた。

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「子ども食堂」がオープンするのは毎週金曜日。このうち第1、第3金曜日は、市内にあるフリースクール「カラフルハピフル」に通う子どもたちが調理を担当している。

この日のメニューは、カレーライス。それに人参サラダと味噌汁。企業から支援してもらった食材を見て、どんな献立にするか、皆で話し合いながら決めるという。

子供達が調理を担当する日は、午前中からその日に提供するメニューの下ごしらえを始める。グループに分かれ、交代しながら50人分の食事を2時間ほどで調理する。

2024年から始まったこの取り組み。始まった当初は、うまくいかなければ止める選択肢もある“お試し”でのスタートだった。

フリースクールがなぜ?子ども食堂

「前年の5月からスタートしてみて、子供達が「楽しい」「料理が楽しい」「有難うと言われるのが嬉しい」と前向きな反応だったので、『じゃあ続けてみる?』ということになった」と話すのは、フリースクール「カラフルハピフル」の代表、永野マミさん。

「カラフルハピフル」永野マミ代表
「カラフルハピフル」永野マミ代表

「カラフルハピフル」は、学習のほか、スポーツや芸術、料理などのカリキュラムを準備していて、様々な理由で学校に通うことができない子供たちを受け入れている。

『子ども食堂』での調理も、当初はフリースクールならではの葛藤もあったと永野さんは、話す。「包丁も触りたくない、怖いとか。狭いキッチンに、皆んなで入ってやることが、苦しいとか…。いろんな子がいるので、いろんな子の気持ちに寄り添った時に、みんなで活動ができる状況を作れるか心配だった」と永野さんは、振り返る。

「美味しい!」に“やりがい”

スタートから丸1年。「子ども食堂」での調理を楽しみに、このフリースクールに通い始めたという男の子も現れた。「自分の趣味が料理だから、最初ここに来た時に子ども食堂というのが、一番ピンときました。楽しいです!」と男の子の表情は明るい。子供達それぞれが、自分のペースで食材を切ったり、炒めたりと、手際よく調理を進める。料理をしながら分担して、食器洗いまで終わらせるチームワークの良さだ。

この「子ども食堂」の営業時間は、正午から午後6時まで。ランチタイムに賑わうのは、勿論、学校帰りの子供達や習い事帰りの親子連れ。それに地域の人達なども、「温かい夕食」を食べに次々と来店する。

子供達が調理したことを聞いた客は、驚きながらも「美味しい!」と評判は上々だ。この日のカレーは、人気で、30人分追加して調理した。

「美味しい!」客の評判は上々
「美味しい!」客の評判は上々

社会貢献しながら子供も成長

フリースクールの生徒が調理する取り組みについて、食事をした人は、「自主性も生まれて、凄くいい取り組みだなと思う。もっと応援したい気持ちになる」「子供達が生き生きして楽しそうだし、いい経験になっていると感じている」と好意的だ。

代表の永野さんも「子ども食堂で社会貢献をしながら、子供たちの成長に繋がる。こんな良いカリキュラムは他にはない」と自分達の取組みに胸を張る。

1か月に2回、調理場に立つ子供たち。来店した人達の声を聞き、刺激を受けていると話す。「1人で来る人も、家族連れで来る人も、年齢関係なく、自分の料理を楽しんで食べてくれるのは、嬉しい」とやりがいも感じている。

代表の永野さんは、なかなか思いを口にできなかった子供たちにとって、それぞれの感謝を伝える場になっているのではないかと感じている。「いろんな大人を頼って、今ここに居場所として行き着き、子供達なりに、いろんな方に感謝していると思う。最初は、『とにかくやらなきゃ』という義務感、切羽詰まった感じがあったが、回を重ねるごとに、『いつも来てくれて有難うございます』と言いながら、接客をできるようになってきた。余裕をもって有難うを伝えているかなと思う」。

学校で居場所がなくなり、自信を失くした子供たちも、自分が作った料理で、人に喜ばれる経験をすることで、少しずつ自信を取り戻し、コミュニケーション能力もつく。

永野さんは、子供たちの表情や態度が前向きに変わってきていると感じている。子ども食堂で、社会貢献しながら子供たちの成長に繋がる取組み。今後の更なる広がりに期待が寄せられている。

(テレビ西日本)

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