宮城県丸森町の大張地区で、漫画やアニメのキャラクターになりきるコスプレのイベントが開かれました。人口700人の地区に各地から100人を超えるコスプレーヤーが集まり、町が大いににぎわいました。
丸森町の北西部自然豊かな大張地区にある旧大張小学校。3年前、学校の再編成で閉校しました。その校舎に集まったのは、コスプレーヤーたち。校舎を貸し切ってのコスプレイベント。人口約700人の地区に各地から115人が集まりました。
校舎は全て開放。教室にある黒板に机、小物まで残されているものはなんでも使ってOK!当時のまま残る校舎で思い思いに撮影をします。
佐藤進さん
「こんにちは!楽しんでいますか?」
イベントを企画した佐藤進さん。大張小学校の卒業生です。普段はハチの駆除をしていますが、地元を盛り上げたいと去年から仙南地域で「コスプレイベント」を始めました。
せんなん夢コス実行委員会 佐藤進代表
「コスプレ文化にご協力をいただいて、自分たちの(町の)価値を再発見していただいて、仙南地域に住む方だけではなくで全国に住むコスプレ-ヤーの夢を叶えるコスプレ文化の力を借りて夢をかなえる」
一口に「コスプレ」と言っても楽しみ方はそれぞれです。
『ハイキュー!!』黒尾鉄郎のコスプレーヤー
「音駒高校の黒尾鉄郎です!孤爪研磨です。私は一番最初好きな、推しの服を着たいから始まったんですけど…」
『ハイキュー!!』孤爪研磨のコスプレーヤー
「私は逆に推しの隣に立ちたい」(Q黒尾さんが?)「推しです」
こちらは高校生ロックバンドの青春を描いた漫画の登場人物。体育館のステージをバンドのステージに見立てたそうです。あのキャラクターならこんな行動をするかなと、それぞれの解釈で作中にはないシーンを想像して写真を撮ったり、中には家族で参加する人も。
親子で参加(Qきょうは何のコスプレ?)
子供「かずとら」 ※『東京卍リベンジャーズ』羽宮一虎のコスプレ
母親「子供も一緒にやっているので、おでかけの延長戦じゃないですけど、家族で遊ぶ楽しみとしてやっていますね」 ※『ひぐらしのなく頃に』北条沙都子のコスプレ
参加するのは、コスプレーヤーだけではありません。カメラマンも重要です。この日参加したカメラマンは30人。
親子で参加した母親
「めっちゃいい感じ!撮ってくれた写真なんですけど、すごーい!」
特定のコスプレーヤー専属のカメラマンもいれば、イベントで初めて会って撮影するカメラマンもいるそうです。
カメラマンの参加者
「こういうキャラクターでこんな感じの性格の子なんですと言われたら、こんな感じのポーズでいってみようかとか指示してみたり、相手がこういうので撮りたいというやつで撮ってみたり、そういう感じで撮影を進めていくのが僕のスタイルです」
参加者たちは、今回の会場「廃校」がさまざまなシチュエーションで作品の世界観を再現でき、コスプレにうってつけの場所だといいます。
『呪術廻戦』乙骨優太のコスプレーヤー
「小学校、廃校というのがアニメとあっていいなと思ったので参加しました。(作中の)任務先の小学校みたいな」
新たな活用方法を探す廃校とよりよい撮影場所を求めるコスプレーヤー、互いのニーズが一致しました。ところで、大張地区には飲食店がありません。一番近いコンビニエンスストアも車で20分ほどかかります。たくさんの人を招くには課題もありましたが、そこで手を挙げたのが…。
大張青年団HOOK 大槻裕史さん
「コスプレはしてないです!食事を会場にいらっしゃったみなさんに提供できるようにお手伝いのような形で来ています」
地域の住民有志が食事を提供することになりました。
大張青年団HOOK 大槻裕史さん
「(コスプレイベント)は今までなかったことですので、みんな戸惑うとことは多少あるとは思うんですけれども、それ以上にこんな県境の山奥に県内外から多くの人が来てくれるというのは、ただただ、うれしいですね」
こう話すのは、大張地区の青年団のメンバー大槻裕史さん。青年団は全員が大張小学校の出身です。
青年団のメンバー
「衣装を汚したくないとか、食べやすさとか、おいしくて食べすぎちゃうとか、お腹が出ちゃってとか聞いたので、どんなものが喜んでもらえるのかをみんなで調べたり聞いたりしながらメニューを決めた」
(Q出来栄えは)「おいしいと思います」
今回提供するのは温かい豚汁と大張のタケノコを使ったタケノコご飯など。さらに…
農友会 八島芳浩会長
「はい!コメ炊き上がりました。大張産で私のうちで作ったコメになります」
ひと回り年上のグループは大張産のコメを使ったカレーでもてなします。これができるのも、廃校の家庭科室があるからこそ。昼時には食事を求めて、家庭科室に多くのコスプレーヤーが集まりました。
『ハイキュー!!』音駒高校のコスプレーヤーたち
「手を合わせてください!いただきます!」
実は、コスプレの会場で食事が提供されることは珍しく、参加者はこれも楽しみのひとつだったといいます。
参加したコスプレーヤー
「現地でご飯を食べるって、どうしても短い時間で食べがちになるんですけど、こうやってゆっくり温かいご飯を食べられるのはうれしいです」
「珍しいじゃないですか。学校なのも珍しいし、こういう調理室みたいな場所で食べられるのも、すごく懐かしい感じがして面白いし、良いですね」
大張青年団HOOK 大槻裕史さん
「廃校と決まった後の校舎って、これから何に使われるんだろうなとか、割とネガティブな想像しか生まれてこないというか。こんなにたくさんの人がいらしてくれたのは、ただただ、うれしいだけですね」
学校としての役目を終えたかつての小学校から、住民の「地域愛」とコスプレーヤーの「コスプレ愛」で新たな魅力が生まれています。