20年に一度の祭りです。2033年に行われる伊勢神宮の式年遷宮。その御用材となる木を伐り出す「御杣始祭(みそまはじめさい)」が長野県上松町で行われました。地元の林業関係者が伝統の伐採技術や思いをつなぎました。
降りしきる雨の中、上松町の国有林で行われた「御杣始祭」。三重県の伊勢神宮の式年遷宮に向けた祭りの一つです。
式年遷宮は、20年に1度、社殿を建て替えご神体を遷す伊勢神宮最大の祭りで、1300年余りの歴史があります。63回目となる次の遷宮は2033年です。
「御杣始祭」は、式年遷宮の御用材を山から伐り出す祭りで、木曽谷は江戸時代から御用材を伐り出す山「御杣山」に定められてきました。
今回は、高さ26m、直径60cm余り、推定樹齢300年のヒノキ2本を伐採します。
伊勢神宮祭主の黒田清子さんや、地元の関係者が見守る中、作業が始まりました。
純白の作業着を身にまとうのは伐採を担う「杣人(そまびと)」。
内宮の御用材となる木の伐採は、木曽の林業関係者でつくる「三ツ紐伐り保存会)」の7人が担当します。この日に向け、斧だけで伐り倒す伝統の技法を5年前から練習してきました。
代表の杣頭を務めるのは橋本光男さん(72)。20代前半から木曽の営林署に勤務し、長く林業に携わってきました。初めて御杣始祭に参加したのは32歳の時です。
杣頭を務める・橋本光男さん:
「御神木をやれる(伐採できる)っていうのはすごく誇り。杣の誇りじゃないですかね」
52歳で迎えた前回の祭りは保存会のメンバーとして参加。伝統の技法を受け継いできました。
3回目となる今回は杣頭として使命感も緊張感もひとしおです。
杣頭を務める・橋本光男さん:
「だんだん近づいてくるとね、いろいろ緊張、心配事があって夜も寝られない。どうやってやればうまく寝て(=木が倒れて)くれるかなとか、いろいろな面が頭をよぎっています」
「三ツ紐伐り」は三方向から斧を入れ、最後に残された部分=「弦」を伐って倒します。
そしてー。
杣頭・橋本さん(掛け声):
「大山の神、左斧、横山、一本寝るぞ」
「寝る」とは大切な木を伐り倒すことです。
伐り出したヒノキは、伊勢神宮のご神体を納める器を作るための神聖な用材「御樋代木(みひしろぎ)」となります。
杣頭を務めた橋本さんはー。
杣頭を務める・橋本光男さん:
「無事に寝かす(伐採する)ことができて、ほっとしています。(「三ツ紐伐り」は)昔からの技法、絶えないようにしてもらえればうれしい」
6月4日からの「御神木祭」で、御用材を台車に載せて町内をひきまわす「お木曳き」などが行われ、その後、6日に伊勢神宮へと出発します。