鹿児島市立美術館では2025年で40回目を迎える美術展「む展」が開かれています。
様々なジャンルの作品に加え、先日はテレビコマーシャルなどを手掛けるクリエイティブディレクターの講演もありました。それぞれが世の中へ向けるまなざしを取材してきました。
む展は1982年に武蔵野美術大学の卒業生を中心に鹿児島で始まり、2025年で40回目を迎えました。
ひときわ存在感を放っているのが、こちらの幅15メートルに及ぶ巨大な木の根を描いた作品です。
赤い大地に根がはりめぐらされています。
作者の久保井博彦さんは心筋梗塞を患った経験から、この大きな根っこに体をめぐる血液の流れを見いだして描きました。
現代社会に問いかける作品も。
「おーい!私はダレ?」
一見、人の立ち姿に見えますが、近くで見るとムンクの「叫び」のような表情にも見えます。
陶芸家・有木義雄さん
「自分って何だ?ということよりも、他者に自分への評価を絶えず問う社会なんじゃないかという問題認識を持っている」
SNSなどで発信される表の自分と目には見えない裏の自分。
「どう見られるか」にこだわるあまり、自分自身を見失ってしまうこともあるのではないかというメッセージも込められています。
1日は「おもしろい」とは何かを探る講演も。
講師のクリエイティブディレクター萩原幸也さんは、Airペイやホットペッパーグルメなどのテレビコマーシャル、それに企業のPR動画など約200本を手がけています。
そんな萩原さんが考える「おもしろい」とは・・・
クリエイティブディレクター・萩原幸也さん
「(SNSでは)意味が分からない物ってBADにしちゃう。炎上しちゃうんですよ。『つまらない』『わからない』『ダメだな』となるがそうじゃない。その瞬間は分からなくて何か不思議だなと思うかもしれないが、それは新たな気づきにつながる。ここのバランスが含まれているものを僕は面白さだと考えている」
どの作品もそれぞれの作家が世の中を見つめる視点が表れています。
む展実行委員長・太良仁さん
「上下や分野、分け隔てなく楽しんでいる様子をお客さんに感じていただければ、楽しい『む展』が伝わるのではないかと思う」
40回目の「む展」は6月8日まで鹿児島市立美術館で開かれています。