90年続く老舗和菓子店 コロナ禍に人気商品が誕生

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岩手・野田村で90年続く老舗「まるきん大沢菓子店」。
外舘心(とだて・こころ)さん(36)は、村で唯一の和菓子職人。

この店には2020年、新たに加わった和菓子店ならではの商品がある。
それは、アイスキャンディーの「くずバー」。

外舘心さん:
溶けても流れ落ちてこなくて、プルプルした状態なので

和菓子で使われる「くず粉」を使用していて、モチモチとした独特の食感が特徴。
この夏、地元の客を中心にリピーターが続出した。

外舘心さん:
コロナの影響もあり、すごく暇で。このくずアイスというのをやってみたら、人の流れが変わるのかなと思ってやってみました

新型コロナの苦難・葛藤…蘇る9年前の記憶

この「くずバー」には、ある思いが込められている。

ここ大沢菓子店にも、新型コロナは深刻な影響を与えていて、その苦難や葛藤は、9年前のあの日の記憶を蘇らせていた。

2011年3月。人口5000人に満たない野田村にも津波が押し寄せ、改装したばかりの大沢菓子店は高さ2メートルの津波に襲われた。

しかし、わずか2カ月後には再開をのぞむ地元住民などの後押しもあり、大沢菓子店はいち早く営業を再開。多くの人で賑わった。

外舘心さん(2011年5月):
周りの方も、オープンに向けて本当にいろいろと手伝ってくれたので、自然と笑顔になったというか

震災から9年半 心さんを支える家族の絆

あれから9年半が過ぎ、心さんの生活にも新たな変化があった。
心さんは7年前に結婚、今では3人の子どもの母親となっていた。

長男の成君(6)は、よくお店を手伝ってくれるお兄さん。
実は、この人気商品「くずバー」には、成君のアイデアが生かされていた。

外舘心さん:
この棒が短いと持ちにくいって言われて。それじゃお母さん持てないって言われて。あ~確かに持てないなと。けっこう(子どもに)気付かされることがありますね

食べる側の視点に立った子どもながらのアドバイスは、心さんの和菓子作りを支えていた。

外舘心さん:
子供がいると毎日が楽しいですね。みんなが元気で健康で笑顔でいてくれることが私の元気につながります

夫・外舘隆夫さん(35):
家では家の顔があって、仕事では仕事の顔があるんでしょうけど。尊敬しかしてないですね。かっこいいと思います

“恩返ししたい”村で和菓子職人を続ける理由

そして地域に住む根強いファンも、心さんを支える大切な存在。

来店客:
おいしかったので、また来ました。(くずバーは)溶けづらいのですごくお勧めです

常連客:
(震災から)もう10年経って、この辺見ても、ほとんどお店もなくなったし。店を守るために一生懸命頑張っているから応援してあげたいなと思ってます

外舘心さん:
まわりの方々の温かさというか、毎日いろんな方に来ていただいて。それこそ本当に笑顔をもらえたというか、そういう感じでした。本当に

「この野田村に恩返しをしたい」。
その思いこそ、心さんがこの野田村で和菓子職人を続ける理由だった。

そして生まれ育った野田村を、子どもたちにも好きでいてほしいと心さんは言う。

外舘心さん:
海で遊んだり、釣りをしたりとか、子どもたちは大好きで。(子どもは)震災を経験していないので、怖いっていうイメージがまだないと思うんですけど。やっぱり海は好きでいてほしいですね

震災の教訓と、自然豊かなふるさとの素晴らしさを子どもたちに伝える心さん。
長年、村民に愛される和菓子店には、村民への思いと逆境に負けない家族の絆があった。

(岩手めんこいテレビ)

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