事件発生からまもなく3年。
大分県別府市のひき逃げ事件は新たな局面に入りました。重要指名手配されている八田與一容疑者について、殺人などの容疑が追加に。
時効の無い殺人事件として捜査されることになった背景を詳しくお伝えします。
3年前の6月29日。別府市の交差点で、バイクに乗っていた男子大学生2人が軽乗用車に追突されました。
1人が死亡、もう1人もけがをしましたが、車を運転していた八田與一容疑者は救護措置をすることなく、現場から逃走。
2023年9月、道路交通法違反のひき逃げの疑いで初めて、全国の警察を挙げて捜査する「重要指名手配」に指定されました。
未解決のまま、まもなく3年を迎えようとする中、新たな展開が。
◆TOS山路謙成アナウンサー
「八田與一容疑者が走行していたこの道路の法定速度は40キロですが、県警は走行実験などを行い、速度からも殺意が認められるとして新たに殺人容疑などを追加しました」
県警は2日、容疑に殺人と殺人未遂を加えて、新たに逮捕状を取ったことを明らかにしました。
法定速度を大幅に上回る速度で運転していたことや現場にブレーキ痕がないこと、
さらに防犯カメラの解析や走行実験などの結果、八田容疑者に殺意があったと立証できる証拠が集まったとしています。
ひき逃げの公訴時効は7年ですが、今回、容疑が追加されたことで、この事件は時効の無い殺人事件として捜査されることに。
殺人事件としての捜査を求め、刑事告訴や署名活動を行ってきた遺族と遺族を支援する「別府願う会」は「これほど時間を要するとは思いませんでした。私たちの戦いは終わりません」などとコメント。
引き続き、八田容疑者に関する情報提供を呼び掛けています。
刑事法学が専門の西南学院大学の福永俊輔教授は、警察がひき逃げ事件から殺人事件へと舵を切った理由について、次のような見解を示しました。
◆西南学院大学 福永俊輔教授
「被害者感情、遺族感情というところは大きく作用したところではないかと思う。逃走中の被疑者に対するメッセージ。7年に逃げ切れたらと思っているかもしれないが、 時効がかからないというメッセージ性があるのではないか」
ここからは山路記者とお伝えします。まもなく事件発生から3年を迎えようとする中での殺人容疑の追加ですが、なぜこのタイミングだったのでしょうか。
◆TOS山路謙成記者
専門家は遺族感情を考慮したという考えを示していましたが、県警はあくまでも「証拠が集まったから」だと説明しています。遺族たちは早く殺人容疑で捜査するよう求めていましたが、県警としても「当初から殺人容疑も視野に捜査を行っていて、殺意を立証する証拠を集めていた」としています。
その殺意の立証としてどのようなことをしていたのかですが、複数回にわたる車の走行実験や防犯カメラ映像の解析、現場検証に加え、残された八田容疑者の車の計器を詳細に調べるなどしてきたということです。
こうした証拠の積み上げは「難しかった」ため、時間を要したと説明しています。
ただ、「殺意が証明できる」という証拠ですが、捜査に支障があるとして具体的には明らかにはしていません。
県警の福岡弘毅刑事部長は「県警の総力を挙げて一日も早く検挙に努めたい」とコメントしていますが、事件の早期解決に向けた捜査の進展が求められています。