農林水産相の交代をきっかけに、大きく転換した米政策。随意契約による政府の備蓄米放出が本格的に動き出した。その裏で一連のコメ価格高騰の煽りを受け、苦渋の決断を迫られた町の米穀店もある。
創業80年の老舗襲うコメ騒動
「倉庫内の在庫量は、全然ないですよ。もっと入っとかないかん」とやりきれない表情でインタビューに応えるのは、米穀店『金山』社長の藤本捷大さんだ。

「令和6(2024)年産の予約分は全部、入荷しました。あとは高い玄米を買わなければいけない。それではとても経営が成り立ちません』と話す。

福岡市城南区の米穀店『金山』は、創業80年以上の老舗。玄米60キロを約2分で処理できる精米設備を整え、銘柄米を中心に味と品質にこだわりながら営業を続けてきた。

この1年で倍以上となったコメの価格。直近では、過去最高を更新した一方で、店の仕入れ価格もハネ上がっている。事業規模が小さい米穀店にとっては、元手となる資金が足りなくなる事態に陥っているのだ。

備蓄米を放出してコメの価格抑制と供給不足を解消して欲しい。なぜ国は、もっと早く動かないのか。藤本社長の切実な思いも届かず、経営は日を追うごとに追い詰められていったという。
「農水省の政策失敗ですよ」
「仕入れ価格が高くなったからといって、利益を乗せられるということではない。コメは価格的に利益が低い。資金力があって継続していければよいが、高騰したコメを買ってくれますか。コメの仕入れもできないし、高いし」。藤本社長の言葉からは、怒りが静かに滲みだす。

令和のコメ騒動で追い詰められた老舗の米穀店。「今月(5月)いっぱいで暖簾をおろします」と藤本社長は、苦渋の決断を口にした。

「この半年から1年、歯がゆいし苦しい。これも時代の流れだけど、ひとつ言いたいのは、農水省の政策失敗ですよ。こういう形で暖簾をおろすということには残念でなりません」と藤本社長は怒りとも悲しみともいえない表情で語った。

古古米、古古古米の備蓄米放出でスーパーなどには行列ができている。しかしその陰で地域を長年に渡り支えた米穀店が、姿を消す歪な事態も起きている。
(テレビ西日本)