5月下旬、福井県内のとある山から「ジージー」という鳴き声が。セミにしては早すぎる?と感じた福井テレビの記者が、セミなのか…何か違う生き物なのか…その正体を追った。

福井県立恐竜博物館の周辺は森に囲まれ、5月だというのに「ジージー」とセミのような鳴き声が聞こえてくる。しかし、目を凝らしてもその姿を見つけることはできない。
観光客も「セミ?鳥?鳥はこんな鳴き方しないし…」「セミとはまた違う感じ?何?」「ジージー聞こえるね。季節外れのセミですか…」などと不思議そうに首を傾げる。

鳴き声の正体はセミなのか、それとも別の生き物なのか。昆虫に詳しい福井市自然史博物館の梅村信哉学芸員を訪ねた。
するとー
「間違いなく『ハルゼミ』ですね。県内各地のマツ林に生息していて名前の通り春に鳴くセミです」と返答が。

梅村学芸員が標本を見せてくれた。ハルゼミは体長3センチほどと小型だが、立派なセミの仲間。県内では5月の連休明けから6月初旬にかけて鳴き声を聞くことができるが、姿を見つけることが難しいセミ。
「マツの枝の高いところ、梢で鳴く習性がある」といい学芸員でも「なかなか見つけづらい」という。

羽化する際も木の高い場所が多く、抜け殻すら見つけることが難しいハルゼミ。ちなみに…梅村学芸員は3日間かけてようやく映像の撮影に成功したそうだ。

福井県内には13種類のセミがいて、うち3種類が「ハルゼミ」の仲間。別名「松蝉(マツゼミ)」とも呼ばれ、俳句の世界では晩春から初夏の季語にもなっている。
このハルゼミの鳴き声が聞けるのは6月初旬までの期間限定。その後、本格的なセミのシーズンがやってくる。
