全国で募集された「国際交流イングリッシュキャンプ」という子供向けのイベントをめぐり、トラブルが起きている。1泊2日で参加費は3万円前後のイベントだが、中止が相次ぎ、返金を求めても運営事務局と連絡がとれなくなっているという。宮城県はバスなどを手配していた旅行会社に対し、行政処分に向けた手続きを始めた。運営事務局の元職員によれば、返金しなければならない規模は「数千万円単位」。その実態が少しずつ明らかになってきた。

過去に行われたキャンプの様子
過去に行われたキャンプの様子
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無許可で「後援」を記載

小学校でも配られたというキャンプのチラシ。全国各地の教育委員会の名称がずらりと並ぶ。だが、記載のあった仙台市と宮城県の教育委員会に取材すると、後援の許可を出していないという。

後援に名を連ねた各地の教育委員会
後援に名を連ねた各地の教育委員会

子供の体験をうたい、公的機関も関わっているようにみえるイベント。5月に開催予定だったキャンプに申し込んだ保護者は、10日前に中止を告げるメールを受け取った。返金を求めるため事務局へ電話してもほとんどつながらず、ようやくつながっても「申し訳ございません」と答えるだけで、返金対応への回答はなかったという。

子供の体験の機会と大々的にPRしていた
子供の体験の機会と大々的にPRしていた

実質的経営者は前代表

支払いをめぐるトラブルは参加者だけではなかった。5月16日に返金トラブルがFNNによって報じられると、かつて会場として使用したキャンプ場やバス会社への代金未払いが判明するなど、ずさんな経営状況が次々と明らかになった。

復興支援センターとハローワールドは同じフロアにある
復興支援センターとハローワールドは同じフロアにある

このキャンプを運営しているのは、仙台市青葉区に事務所を構える一般社団法人「宮城復興支援センター」。同じ部屋にはツアーを手配していた旅行会社「ハローワールド」も入る。センターの代表は現在、女性の名前で登録されているが、女性はFNNの取材に「3~4年前に退職した。こんな状況になっているとは全く知らなかった」と回答した。元職員によれば、どちらの団体もセンターの前代表を務めた50歳男性が、実質的な経営者だという。

立ち入り検査 空振りに

宮城県によると、返金されていないケースは少なくとも216件600万円分ある。県は返金するようハローワールドを行政指導したが、期限までに返金は確認されず、5月27日にハローワールドへ立ち入り検査を行った。

立ち入り検査を終えた宮城県職員 箱は畳まれたまま
立ち入り検査を終えた宮城県職員 箱は畳まれたまま

前日時点で、代表を名乗る人物とメールのやり取りはできていたというが、この日は事務所に誰もおらず、検査は“空振り”に終わった。宮城県は「改善を確認できなかった」として、業務停止処分よりも重い、登録取り消しを通告。6月5日に公開の場で意見を聞く聴聞を行うなど、行政処分に必要な手続きを進めている。

前代表は「ワンマン」

実質的な経営者という前代表の男性はどんな人物なのか。宮城復興支援センターの元職員は「細かいことに執着するタイプで、付き合うのはかなり難しかった」という。アルバイトも入れれば、スタッフはのべ4、50人。ワンマンな経営で事業を引っ張っていたが、元職員は現在の状況を「なるべくしてなった」と証言する。

宮城復興支援センターの元職員 ※画像を加工しています
宮城復興支援センターの元職員 ※画像を加工しています

前回のキャンプの支払いを、次のキャンプの参加費で賄う。いつの間にか、自転車操業の状況に陥っていたという宮城復興支援センター。元職員によると、2年前から返金をめぐるトラブルが始まり、金額がどんどん増えていったという。

いまだ不明 被害の全容は?

また、未払い金の規模について元職員は「宿泊施設でも数百万円あると思う。バスに関しては1500万円から2千万円。保護者に返すお金は多分、数千万円単位であると思う」と証言した。

前代表の男性は、未払いやクレームが相次いでいてもキャンプの募集を続けさせたという。元職員は、キャンプに申し込んだ保護者と子供に対して「3万円は簡単に出せる金額ではない。申し訳ない気持ちがある」と話す。

宮城復興支援センターの入るビル
宮城復興支援センターの入るビル

“雲隠れ”続く 救済の動きも

旅行業者などでつくる日本旅行業協会は5月26日、ハローワールドに返金を求めている人の弁済に応じると発表し、救済に乗り出した。

窓から見える棚に返金用紙と書かれたファイルがあった
窓から見える棚に返金用紙と書かれたファイルがあった

FNNは男性の取材を試みているが、電話に出ず、仙台市内にある自宅のインターフォンも応答はない。取材によると、男性は別に経営していた子供向けのイベント会社で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う雇用調整助成金など2 億円あまりを不正に受給し、返還を求められていた。トラブルを招いた張本人は今どこにいるのか?大人として、一刻も早く責任を果たすことが求められている。

仙台放送
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