連休中に発生した台風12号は日本の南の海上を北上し、24日から25日にかけて東日本や北日本にかなり接近する見通しです。さらに秋雨前線も活発になることから、長い時間にわたって大雨への警戒が高まっています。

台風12号の進路予想図(23日現在の予報)
台風12号の進路予想図(23日現在の予報)
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・台風が来る前から大雨に警戒
・進路から離れた場所でも大雨の可能性
・竜巻、落雷、突風、局所的な豪雨

「Live News it!」でも3つの点で注意を呼びかけています。

木村アナ:
番組内でも事前の現段階にできる備えとして、「ハザードマップをもう一度確認しよう」と繰り返しお伝えしていますね。

防災士ハッチー:
災害への備えとして、どのタイミングで何をするのか時系列で考えておくことはとても大事な取り組みです。今、自治体では「タイムライン防災」を導入する動きが強化されていますが、今回はそれを個々の家庭の避難行動計画に落とし込む「マイ・タイムライン防災」について考えてみよう!

佐々木アナ:
これまで折々、「ハザードマップってどう見るの?」「日常備蓄ってなに?」など防災の基本を考えてきたけれど、今回はその集大成です。

(関連記事:【コロナ禍の防災・減災】まずは自分がいる場所を確認して「ハザードマップ」を活用する
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そもそも「マイ・タイムライン」って何?

防災士ハッチー:
最初に「マイ・タイムライン」が一体どういうものなのかを確認してみよう。マイ・タイムラインとは「防災行動計画」のことだね。

事前に予測できる台風や大雨などの場合は、数日前からある程度の予測ができる。備える時間的余裕がある間に、個々の家族構成や生活環境に応じて時系列にそって「誰が」「いつ」「何をする」のか、あらかじめ時間表を作っておこうという考えだよ。

いざ災害が起きてからだと、どうやって情報を取得するのか、どう判断するのか混乱してしまうからね。

木村アナ:
具体的には何をどう書いていけばいいのでしょう?

実際に作成してみよう!台風の場合は…

防災士ハッチー:
自治体ごとにマイタイムラインの作成の仕方のガイドなどはありますが、ここでは「東京都のマイ・タイムライン」を例にするよ。

災害に応じて、3つのシートに分かれているんだ。

・台風が近づいているとき!
・大雨が長引くとき!
・短時間の急激な豪雨が発生するとき!

まずは「台風が近づいているとき!」の例を見ていこう。

木村アナ:
この例では夫婦に子ども1人、高齢の母1人の4人家族で、ハザードマップを確認したところ「河川の氾濫によって家が浸水する地域にある」という想定で考えられていますね。参照する情報は何なのか、警戒レベルに応じてどんな行動が必要になってくるかをまとめていくのですね。

東京都防災ホームページ「東京マイ・タイムライン」一般用(令和2年7月更新)より
東京都防災ホームページ「東京マイ・タイムライン」一般用(令和2年7月更新)より

佐々木アナ:
この例を自分自身の家庭家族構成と環境にあわせて考えていきます。住んでいる地域によって、高潮や河川の氾濫、土砂災害などのリスクの可能性もあります。その災害のリスクによってどの情報を気にしておかなければいけないか。また高齢者や妊婦、身体の不自由な方、避難場所から遠い所にお住まいの方など、避難するのに時間を要する場合は「避難情報の警戒レベル3」で避難を始めるよう可視化しておくと、いざという時に判断しやすいわけですね。

防災士ハッチー:
この表の避難の前に「常用薬の確認」とあるけれど、現状のコロナ禍では避難所の場所が変更になるケースもあるので確認が必要になるし、3密を避けるために知人や親戚宅への避難の可能性も考えておきたいところだね。非常用持ち出し袋にマスクやアルコール消毒液、体温計が入っているかどうかもチェックしておこう。

東京都防災ホームページ「東京マイ・タイムライン」一般用(令和2年7月更新)より
東京都防災ホームページ「東京マイ・タイムライン」一般用(令和2年7月更新)より

また、日本気象協会のマイ・タイムライン作成ポイントによると、台風が接近する3日前には家族全員でハザードマップを確認し、避難経路と避難場所を確認すること。

2日前には非常持ち出し袋の確認と不足品の用意、外回りの点検(飛ばされやすいものを片付ける、側溝や雨どいの掃除)なども薦められている。あわせて書き入れておくと事前に何をしておけばいいのかが明確になるね!

大雨では5段階の警戒レベルをまず確認

木村アナ:
続いて「大雨が長引くとき!」を見てみましょう。

防災士ハッチー:
それぞれの警戒レベルがどういうものか、それ自体を確認する必要があるんだ。

警戒レベル1は、大雨に関する気象情報や早期注意情報が発表されている段階。作成してあるマイ・タイムラインを確認しながら、「非常持出袋の確認と不足品の用意」「自宅の外回りの点検」をする段階だね。

警戒レベル2では、「大雨注意報」や「洪水注意報」が発表されている。ここでは「ハザードマップや避難所・避難経路の確認」「携帯電話の充電」「常用薬の確認」など。

警戒レベル3は「大雨警報」や「洪水警報」が発表される段階。高齢者などは避難開始をするタイミングだよ。

警戒レベル4は「土砂災害警戒情報」が発表されるなど、自治体が発する避難勧告や避難指示にしたがって避難するタイミング。ハザードマップによって災害が想定される地域では、自治体からの避難情報とともに避難開始、また避難勧告が発令されていない場合でも危険度分布や河川の水位情報等をチェックして、自らの判断で避難することも必要だよ。

警戒レベル5は「大雨特別警報」や「氾濫発生情報」が発表されている段階。すでに災害が発生している状態」と考えられる。(自宅の2階以上、頑丈な建物の2階以上の垂直避難を含む)すでに避難を完了し、命を守る最善の行動をとろう。

東京都防災ホームページ「東京マイ・タイムライン」一般用(令和2年7月更新)より
東京都防災ホームページ「東京マイ・タイムライン」一般用(令和2年7月更新)より

作っただけで終わりではない。日々の心がけが大切

佐々木アナ:
今回、マイ・タイムラインの意義について東京都総務局の防災計画課へ取材してみると、実際にタイムラインを作ってみた方から「初めて具体的に何をどんな風に行動するか考える機会になった」「計画を立てたことで台風や大雨の際に焦らずに済んだ」という声が挙がるそうです。

また、近年の水害のケースでは、実際に避難すると決める後押しになったのは「地域の方の声」と答える方が多いのだそう。

だから、作って安心せずに普段の散歩や買い物など外を歩く時に、「避難の時にはこの道を通るんだな」「避難場所までの近道だけど、水が溜まりやすい低い所なので大雨の時は使わないようにしよう。」など日常に落とし込んで考えてみてほしい、また、いざとなったら余裕をもって、家族の避難に影響が出ない範囲でいいので地域の方にも声をかけながら避難をしてほしい、とのことでした。やはり最後は顔が見える間柄で背中を押す言葉が、人の命を助けることになるのですね。

木村アナ:
国交省によると、自治体のタイムラインの意義についてこのような事例が報告されています。2015年9月の関東・東北豪雨災害で氾濫危険情報が発表された市町村のうち、「避難勧告の発令等に着目したタイムライン」を策定した市町村における避難勧告または避難指示を発令した市町村の割合は72%、未策定市町村は33%となっており、タイムライン策定済みの自治体の方が発令率が高い傾向となりました。

防災士ハッチー:
「事前の備え」と口で言うのは簡単だけれど、それを「いつ」「誰が」「何をするか」まであらかじめ予測して計画し共有しておくことで、先を見越しながらスムーズにコミュニケーションすることができるようになるね。

これまでにも「ハザードマップの見方」や「日常備蓄」を見てきたけれど、そのひとつひとつの行動を実際に防災に活かす上でのマイ・タイムラインなんだ。台風や大雨など、事前にある程度予測できる災害に対して自分の命を、大切な人の命を守ることができるよう、関わる人皆で作り、活用することをお勧めするよ。

【執筆:フジテレビアナウンサー 佐々木恭子】
【監修:報道局社会部 気象庁担当 防災士 長坂哲夫】
【表紙デザイン+図解イラスト:さいとうひさし】

佐々木恭子
佐々木恭子

言葉に愛と、責任を。私が言葉を生業にしたいと志したのは、阪神淡路大震災で実家が全壊するという経験から。「がんばれ神戸!」と繰り返されるニュースからは、言葉は時に希望を、時に虚しさを抱かせるものだと知りました。ニュースは人と共にある。だからこそ、いつも自分の言葉に愛と責任をもって伝えたいと思っています。
1972年兵庫県生まれ。96年東京大学教養学部卒業後、フジテレビ入社。アナウンサーとして、『とくダネ!』『報道PRIMEサンデー』を担当し、現在は『Live News It!(月~水:情報キャスター』『ワイドナショー』など。2005年~2008年、FNSチャリティキャンペーンではスマトラ津波被害、世界の貧困国における子どもたちのHIV/AIDS事情を取材。趣味はランニング。フルマラソンにチャレンジするのが目標。