大阪・関西万博ではエコ活動の一環としてプラスチック製の食器などを紙製に置き換えているが、こうした紙製品は食べ物が付着したり、コーティングされているため再利用が難しい「難再生古紙」として焼却処理されてしまう。これを特殊な技術でトイレットペーパーに再生し、万博会場での再利用を進める企業がある。

「紙は紙から」をモットーに磨いた技術

静岡県富士市に本社を置くコアレックス信栄。1961年の創業で製紙業な盛んなこの地では比較的後発の製紙会社だったため原料の確保に苦労、生き残りをかけ他社が使っていない資源を使えるようにと技術を磨いてきた。

コアレックス信栄の社内
コアレックス信栄の社内
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「紙は紙から」をモットーにリサイクル事業に力を入れ、現在は全国各地から1日あたり約170トンの古紙が送られてくる。

その多くが「難再生古紙」と呼ばれる防水加工が施された紙パックやフィルム、金属のついた紙製品類だ。

難再生古紙の例示サンプル
難再生古紙の例示サンプル

こうした「難再生古紙」はこれまで可燃ごみとして処理されていたが、この会社では紙の繊維だけを抽出する独自の技術を確立。

これにより資源として加工することができるようになり焼却した場合と比べて二酸化炭素の排出量は4割程度に抑えられるそうだ。

万博会場の紙ごみをトイレットペーパーに再生

この技術を駆使していま進めているのが大阪・関西万博の会場で出た紙ごみをトイレットペーパーへと再生させる取り組みだ。

万博会場のごみ(提供:コアレックス信栄)
万博会場のごみ(提供:コアレックス信栄)

対象となるのは各パビリオンで配布されるパンフレットや会場マップはもちろんのこと紙皿や紙コップといった使い捨ての食器の数々。

最短3日間でトイレットペーパーへと姿を変え再び万博会場で使用されている。因みにこのトイレットペーパーには芯がない。

それについてコアレックス信栄の佐野仁 副社長は「大阪・関西万博の会場で出た資源をリサイクルしているので、会場に戻してトイレットペーパーの芯が残るのは違うと考え究極の環境商品として提供している」と説明してくれた。

再生されたトイレットペーパー
再生されたトイレットペーパー

万博開幕から1カ月あまり。すでに11トンもの紙ゴミが回収され順次、“再生作業”が進められている。

「紙ごみと言われているものも立派な資源。この技術を万博会場で披露できるということは世界に情報発信ができる」と佐野副社長は自信をのぞかせた。

リサイクルの可能性拡大へ古紙を使いつくす

4年前には東京オリンピック・パラリンピックでも選手村で出た紙ごみをよみがえらせるなど技術力に定評があるコアレックス信栄。

古紙の前に立つ佐野副社長と村田記者
古紙の前に立つ佐野副社長と村田記者

一方、時代の移り変わりの中である懸念も抱いている。

「ペーパーレスという時代に入り、原料とする古紙は非常に発生しにくくなってくる。焼却処分されている古紙をいかに使い尽くしていくのかが課題」と佐野副社長は見据える。

難再生古紙から再生されたトイレットペーパー
難再生古紙から再生されたトイレットペーパー

いつの時代になっても生活になくてはならないトイレットペーパー。「紙は紙から」の精神を胸に、これからもリサイクルの可能性を広げる挑戦は続いていく。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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