名古屋市議会の上園晋介副議長が、アジア大会のボランティアを集めるために個人情報を無断で登録していた問題では、背景に議員に設定された「ノルマ」の存在が指摘されています。
■「ボランティアに登録」突然身に覚えのないメールが…
2026年に名古屋市などで開かれるアジア・アジアパラ競技大会では2025年4月まで、ボランティアの募集が行われていました。
名古屋市内に住む男性のもとには5月13日、身に覚えのないアジア大会のボランティアへの登録完了を知らせるメールが届きました。
名古屋市内に住む男性：
応募した覚えのないはずのボランティア募集の登録が済みましたという確認のメールがきました。個人情報、氏名、生年月日、メールアドレス、住所、それら全てが入っていたので、どうして知っているのだろうと。
男性が運営事務局などに問い合わせても、なぜ登録されたのか分かりませんでした。その後、名古屋市議会の上園晋介副議長から連絡があったといいます。
名古屋市内に住む男性：
「無作為に自分のためている名刺の中から使ってしまいました。直接今から謝りに伺ってもよろしいですか」と連絡がありました。
男性は数年前に、上園副議長と、名刺交換をしていました。
5月23日、記者が上園副議長を直撃すると…
Q.市民を勝手にボランティアに登録した？
上園晋介副議長（5月23日午後9時ごろ）：
いえいえいえ、勝手にというのは…。すぐにどうのこうの答えられる話ではないので。事実を含めて、なんでそういう経緯になったのか、事務所で精査しています。その方にはきちっとした謝罪をさせていただいた上で、事実確認というか…。
この日は「事実確認中」として、明確に答えなかったものの、2日後の25日、上園副議長は急きょ会見を開き、無断で男性を登録しただけでなく、登録した30人のうち本人と家族を除く、26人すべてが無断だったと明らかにしました。
上園晋介副議長（5月25日午後5時半ごろ）：
個人情報を流出させてしまった方へ、改めて深くおわびを申し上げます。大変申し訳ございませんでした。
■ボランティア集まらず…議員1人に30人の「ノルマ」
名古屋市は、アジア大会のボランティアを9780人集める目標を立てたものの、3月18日時点で3798人の登録にとどまっていました。
そこで、上園副議長の所属する「名古屋民主」と、自民、公明の3会派は、議員1人あたり30人の「ノルマ」を設定し、取りまとめを進めました。
上園晋介副議長：
本当にお願いをしていても、なかなか応募を承諾いただける方が出てこなかったのが事実です。だんだんと期日が迫り、自分の中で30人の目標をなんとか、同じ会派の一人の議員として達成しなくちゃいけないという焦り。
上園副議長は、過去に名刺交換した人など26人を勝手に登録し、生年月日は架空の日付を記入していたといいます。
上園晋介副議長：
正直に申しますと、30人のうちボランティアにご了承いただけた方は4人でした。(4人は)家族です。妻と息子と娘と私です。
この問題に、名古屋の街でも厳しい声が聞かれました。
20代：
あきれる感じで見ていますね。
40代：
常識がなってないなって普通に思います。ボランティアの考え方が基本的に間違っていませんかね。
■「ノルマ」を指示したのは誰？大村知事「知らなかった」
無断登録の背景に、「ノルマ」の存在があったのでしょうか？
名古屋市の広沢一郎市長は5月26日、会見で「不安な思いを抱かせ申し訳ない」と謝罪しましたが、その一方で…
広沢一郎名古屋市長：
これだけのビッグイベントですので、目標設定というか、お1人あたりこれぐらいはというのは、それ自体が間違っているわけではございませんので。
大会組織委員会のトップを務める大村秀章知事は、ノルマについては「知らなかった」と主張しました。
大村秀章愛知県知事：
それぞれの会派がしっかり頑張りますと、ビラ配りもやりますよと。「今日は何人か獲得しましたよ」という話は聞きましたが。(Q.それぞれの会派で何人集めようとかは)私は県知事だから、名古屋市会の会派の皆さんのことまでは存じ上げませんね。
大村知事は名古屋市議の「ノルマ」については知らなかったとする一方で、県議会議員に市町村ごとに「目標数」を定め、取りまとめを依頼していたことを明らかにしました。
大村秀章愛知県知事：
(Q.特に問題ない？)ないと思いますね。そのことで私が議会に命令する権限があるということになります？なりませんよね。ボランティアをお願いするのにノルマがかかるという法律がありますか？ありませんよね。どこまでいってもボランティアなんですよ。ボランティアさんがいなかったらスポーツ大会はできないんですよね。今の話をしていくと、ボランティアを集めちゃいけないというふうに…そんなこと言っていませんよね？
上園副議長は自身の責任について、現時点では、副議長や議員の職は続ける意向を示しました。
上園晋介副議長：
まずは26人全員の方への謝罪を行いたいと思っています。のちの対応については、様々なご意見や様々な方と相談した上で考えていきたいと思っています。
名古屋市は、別の市議が取りまとめた7人からも身に覚えのないメールが届いたと申し出があったと明らかにしました。
7人についてはその後、ボランティアへの参加意思が確認できたため無断ではないとしていますが、他にもメールアドレスの記載がない6人が「身に覚えがない」と話していて、調査を行っています。
（東海テレビ）
