1歳まで生きることができるのは1割とも言われる、重い障がいがある5歳の男の子。
それでも家族はどんどん外の世界へ。
成長の日々を見つめる。
小さなからだと一緒に一歩ずつ外の世界へ―
きょうも、やまちゃんは街へ出かける。
同じくらいの年の子に比べて、小さなからだ。
小山内大和くん、5歳。
「靴めっちゃ小さい」(男の子)
「成長がゆっくりなんだよね」(大地さん)
「生まれた当初は家の中だけの生活だったので、ちょっとずつ外出できてうれしい」(父・大地さん)
「元気な子と触れ合う機会がないので、持てればなと思います」(母・淳子さん)

選んだのは“生きること”― 苦悩と覚悟の先に
「髪ぬらしますよ」(大地さん)
「18トリソミー。18番目の染色体が本当は2本なのが3本。10%くらいしか1年生きられませんという情報もあったので。どこまで生きられるかなっていうのは不安はありましたね」(大地さん)
1日、また1日。命をつないできた。

「きょうも頑張りましたね」(大地さん)
生きることは、大切なものと引き換えだった。
「このまま何もせずみとるのか、なるべく早く家に連れて帰るのに呼吸器をつけるとかつけないとか。声は聞こえなくなるかもしれないけども、気管切開をしたらあとはもう家に帰るだけなので、家に連れて帰れるなって」(淳子さん)

「一生懸命、生きてるよね」(淳子さん)

「安全なかたちでチャレンジを」 命を育む日常
やまちゃんの1日が始まる。
お母さんとお父さんと同じご飯をミキサーにかけてペースト状にしたら、やまちゃんのご飯の出来上がり。
「大和が自分で便とかガス出せないんですよね。だから”かん腸”してガス出したり」(大地さん)
やまちゃんのような子どもを「医療的ケア児」という。

やまちゃんはゆっくり食事中。
こうやって食べられるようになるまで、ずっと頑張ってきた。

1756グラム。
小さな、小さな体で生まれたやまちゃん。
はじめは小さな口に綿棒で。ミルクを一滴、一滴。

やまちゃんの食事の始まりだ。
「まったく食べれないんだったら、嚥下ができないとか飲み込みもできないとかだったら、それこそ拒否して全然食べないとか。だったらもう仕方ないけど、食べれるんだったら、そういう食べる喜びは知っていてもらいたいなと思うから」(淳子さん)

夏には医療的ケア児の日帰りキャンプに参加。

冬には初めてのスキー場にも行った。
「よいしょ。うおー!滑ったのわかったかい?やまちゃん。スピード感」(大地さん)

「元気になったらとか、大きくなったらとか言っているうちに、その日その日は過ぎていっちゃうから。あの時ああすればよかったってならないように。安全な形でいろんなことチャレンジしたいなと思ってはいるけど」(淳子さん)
「(雪って)冷たいでしょ」(淳子さん)

言葉がなくても心は届く―やまちゃんがくれたプレゼント
年に一度の特別な日。医療的ケア児の全国フォーラム。
いつもは体験できない楽しい遊びがいーっぱい!
これまで、やまちゃんの笑顔を見たことがなかったお父さん。
きょうはどうかな?
「こんなの無いもんね」(大地さん)

最初は「ビックリ」。じゃあ、2回目はどうだろう。
「ゆらゆらゆら 止まるよ、ストップ!」「止まったらキョロキョロしてますね。あ!笑ってるー!」(会場のスタッフ)

あ!笑った!
「頑張ったね、やまちゃん。頑張ったね」(大地さん)
言葉にできなくてもきっとある。いろとりどりの感情が。

「なにかね、自分で訴える。何かしらの方法を使って、苦しいときはイヤそうな顔をするでもいいし、嬉しいときにもね、ちょっといい顔をしてくれたりとかすればいいなと思う」(淳子さん)
一緒に歌えなくても、歌を聞かせて来たお父さん。
この夜、やまちゃんがプレゼントをくれた。
「♪ちょうちょう、ちょうちょう、菜の葉にとまれ、菜の葉に飽いたら桜にとまれ。さくらの花の花から花へ―」(大地さん)

あれ、やまちゃん、歌ってる?
お父さんはまだ気づいていないみたい。
「(♪どんぐりころころ)これ知ってるかい?やまちゃん。 どんぐりころころ、どんぶりこ、おいけにはまってさあたいへん。どじょうがでてきてこんにちは」

「あ!なんか、(口を)動かしてるね。歌ったの?やまちゃん。歌ってくれたの?歌おうとしたの?今」(大地さん)
やまちゃんの歌声はきっと優しい。
ふたりには、聞こえる。

ドキュメンタリー『グッドラックやまとのうた』
大和くんと家族の1年を見つめたドキュメンタリー。
ナレーションは俳優の泉谷星奈さん(7)。
やまちゃんと会って医療的ケアについても学んだ。

「話せないけれど耳ではちゃんと聞いている。こういう子がいるんだよということを伝えたい」(ナレーション 泉谷星奈さん)
ドキュメンタリー「グッドラック やまとのうた」。
北海道では5月25日午後2時に放送。
