万博開幕の翌日から休館が続くアンゴラパビリオン。なぜ再開できないのか。
背景には工事費をめぐる深刻な問題があった。

■開幕当日だけオープン…開幕から1カ月以上、閉ざされたままのアンゴラパビリオン
開幕から1カ月以上たった大阪・関西万博。連日、多くの人でにぎわっているが…。
記者リポート:こちらのアンゴラ館、今も赤いコーンが置かれ、人が並んだりする様子も見受けられません。
アフリカ南西部にある国「アンゴラ」のパビリオン。開幕当日だけオープンしたが、その翌日からずっと休館が続いている。
記者リポート:貼り紙が見えます。オープニング スーンと書かれています。こちらの小窓からは、中がうかがえるんですが…。
小窓から見えたのは、雑然とした内部の様子。
休館について博覧会協会が語った理由は、「技術的な調整のため」。一体どういうことなのか?

■「倒産危機に近い」建設業者が明かす休館の真相
取材を進めると建設業者が、工事を最終段階で中断していたことが分かった。その理由について…。
5次下請けAさん:端的に言うと、倒産危機に近い。3月、4月分の入金がない。支払いがない以上は、パビリオンに関しては、営業させたくないという思いが強いです。
こう話すのは、アンゴラパビリオンを担当する建設業者のAさん。
休館の背景にあったのは、『工事費の未払い』。
Aさんによるとアンゴラの発注を請けたのは、外資系企業でその下に2次、3次と様々な業者が工事を請け負う形に。Aさんは5次の下請けとして、ことし2月から工事に入った。
しかし3月以降に、Aさんに発注した4次請けの企業からの支払いが、ストップしたのだ。
5次下請けAさん:元々は4月末に入金するという話で、『遅れて申し訳ない』と、5月10日に入金となって、再三ずっと大丈夫ですか?という話をしていたけど、ずっと音信不通。何回連絡しても、つながらない。
その額はおよそ4300万円。その後、X社は「5月21日に支払う」と期限の延長を求めてきた。

■「金庫の金を持ち逃げ」? 何度も支払いの期限を延長”
不安に思ったAさんの会社が、X社に改めて確認をした時の音声を入手しました。
【Aさんの会社の経理担当】「応援いっただけなのに、どうしてこんな未払いが発生するのでしょうか?」
【X社社長】「そうですね」
【Aさん】「一番は5月21日の話が、あれから進展あって、確実なのかどうかを最優先で知りたいです」
【X社社長】「ここまできたら隠す必要がないので言いますけど、正直言って工事費用として、入金が見込めるところがないので、もう借りてくるしかないです、僕らは」
Aさん:21日のこの前の約束は守れそうにない?
X社社長:今現状はそうですね。
何度も支払いの期限を守らなかったにもかかわらず、「支払えない」と堂々と話すX社。理由については、「従業員が金庫の金を持ち逃げした」というのだ。
Aさんの会社の代表:(従業員と)連絡はつく?
X社:僕はついてないです。見つかるとは思うが、金があるかというと、ないと思う。
その後、5月末には2000万円を支払うと、改めて連絡が。しかし、支払われる確証はなく、Aさんはギリギリの状況に追い込まれている。
5次下請けAさん:どこまで本当に履行されるかというのは、もう信用していないです。ほんま情けないですよね。
5次下請けAさん:朝も昼も一生懸命働いていた人間が、何でこんな裏切り方をされないといけないのか。怒りと絶望。うちからも満額は下請けの人に払えてないので、彼らも生活に大きな悪影響を起こす。依頼した以上は責任があるので、対応しているけど、なんせ急展開すぎて、僕らも額が額だけに対応しきれない。

■「子供が生まれる予定なのに」 連鎖する未払いに苦しむ下請け業者
そのAさんからの支払いを待つ人を取材した。
「6次下請け」として電機関連の工事に入ったBさんは、およそ350万円の工事費用全てを受け取れていない。
6次下請けBさん:(工事は)朝6時から入る時もあれば、9時から入る時もあって、深夜は3時とか4時までやってる中で、今回こんなん(未払い)だったので。あり得へんなという感じですね。予定日は今週なんですけど、うち子供が生まれるという中で、今回お金が入ってこない。
Bさんも、X社に支払いを求め、連絡を取りましたが、X社は、「Bさんが今回の1件をSNSに投稿したことで資金集めが遅れている」と主張する場面もあった。
X社社長:これちょっと冷静に聞いてくださいね。別に責めてるわけでもなんでもないんですけど、着手金をもらえる予定があって、それが(支払いに)充てられるかなと思っていたのが、飛んでしまったので。
6次下請けBさん:僕のSNSの影響でということですか?
X社社長:まあそうです。見られてしまったんで。

■「生活できない」「死者が出る」 万博の裏で広がる悲痛な叫び
AさんとBさんは、工事費の未払いについて警察にも相談している。
5次下請けAさん:生活できない状況まで追い詰められている。さらに言うと材料費も払えなくなったら、我々の今後の取引先もなくなってくるという状況まで追い込まれている。
5次下請けAさん:1日も早く状況改善しないと、この万博に携わった人で何人か“死人”が出てくるのではないかというぐらい。できれば早々に動いて、捕まえて、私含め被害者がいっぱいいるので、彼らに対して弁済していただきたい。金が残っているのであれば。
関西テレビは、X社に取材を試み書面で質問状を送ったが、今のところ回答はきていない。
世界規模のイベントの裏で起こった、未払い問題。事態は悪化の一途をたどっている。
(関西テレビ「newsランナー」2025年5月23日放送)
