脂が乗った大トロに、玄界灘で獲れた新鮮なヒラメ。さらにサーモンにイクラなど、こだわりの食材を使った“高級すし” 400貫を無料で提供するすし職人。大盤振る舞いを続ける思いとは?

この日は“ある特別な客”のため…

福岡・久留米市にあるカウンター8席の人気すし店「鮨おがわ」。築100年を超える町家を改装した小さなお店だ。地元の老舗店で修行を積んだ若き店主のすし職人、小川聡さん(34)が切り盛りする。

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毎朝、柳橋連合市場や地元鮮魚店に小川さん自ら足を運び、目利きした旬の魚を仕入れている。夜は1万6500円の「おまかせコース」のみ。普段、店を訪れるのは企業の社長や医師などの常連客が多い。

しかし、小川さんはこの日“ある特別な客”のためにすしを握っていた。店内には、マグロの赤身、中トロ、大トロのネタが並ぶ。準備したのはなんと、40人前のすし、合わせて400貫だ。

店で仕込んだすしや大きなまな板を車に積んで小川さんが向かった先は。久留米市内のこども食堂。小川さんのすしを心待ちにしていた子どもたち、約40人が集まった。

絶品のすしでお腹いっぱいに

「ネタひいて、みんなに用意しているので、お腹いっぱい食べて下さい」と子どもたちを前に挨拶する小川さん。さらに「足りなかったら、こっちに追加で、中トロや大トロもこんな感じで…」とネタの入った箱を見せると子どもたちからは大歓声が上がった。

この子ども食堂では、無料の塾を開いていて、勉強が終わった後に食事を提供している。企業や個人からの寄付で食材の調達をしているが、物価高騰のなかで運営を続けることは大変だという。

そうした事情を店の客から聞いた小川さんが、すしの提供を申し出て、2024年から春の時期に『1日寿司店』を開催しているのだ。

「イクラとサーモン!イクラ大盛りでお願いします」。早速、子どもからおかわりの注文が入る。「イクラ大盛り!はい、行くよ」と皿に乗せた軍艦巻きの上に「もういっちょう大盛り」とイクラを乗せる小川さん。軍艦巻きのノリからイクラがこぼれ落ちる。これには「わぁ!ありがとうございます」と子どもも大喜びだ。

続々と入るおかわりの注文。子どもたちのリクエストに応えて、目の前で魚を捌き、握っていく。

お腹いっぱいになるまで本格的な“絶品すし”を味わった子どもたち。なかには20貫も平らげた子どももいて大満足のようすだった。

「『うわぁ』とか子どもたちが喜んでくれるので…。僕が小さいときは、そういう経験がなかった」と話す小川さん。そして「ここから1人でもすし職人が出て来てくれたら、またひとつ喜びが増えるので続けていきたい」とこれからの抱負を語った。

子どもたちへのエールを込めて毎年、小川さんは、この取り組みを続けていきたいとしている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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