回転寿司チェーン「くら寿司」が、高級業態「無添蔵」を首都圏に初出店する。新鮮な魚介や職人の手仕事、すりおろし本わさびなどのこだわりで差別化を図る。地方出店の限界を受け、都市部での高単価戦略へシフトし、今後100店舗展開を目指すとした。

プレミアム業態「無添蔵」が首都圏に初登場

くら寿司が展開する高級店が、首都圏に初進出した。

この記事の画像(14枚)

こぼれおちそうなイクラや冷凍していない生本マグロ、そして、鹿児島県産の炙りうなぎなど、回転寿司チェーン「くら寿司」の高級ラインとして、関西で展開する「無添蔵(むてんくら)」が、東京・目黒区で首都圏に初進出する。

29日のオープンを前に、22日、報道陣に公開された。

回転レーンがあるのは通常のくら寿司と同じだが、黒を基調としたシックな内装で、客席は59席だ。

ひと手間かけた本マグロ
ひと手間かけた本マグロ

取材班:
いただきます。ひと手間かかっているので、味も食感が違います。

職人がひと手間をかけたネタや、希少性の高いネタなど、メニューは通常のくら寿司よりも多い200種類以上に上る。

北陸新幹線を活用した「福井 朝獲れ」シリーズ
北陸新幹線を活用した「福井 朝獲れ」シリーズ

福井県の漁港で、その日の朝に獲れた魚を北陸新幹線で運び、夕方には提供するなど、プレミアム店ならではのこだわりが随所に見られる。

メニューには自身ですリおろす本わさびも
メニューには自身ですリおろす本わさびも

自身ですりおろす、本わさびもメニューに用意されている。

出店飽和で都市部に活路見出す戦略

首都圏進出の狙いについて、次のように話す。

くら寿司取締役広報宣伝・岡本浩之IR本部長:
地方はなかなか出店が飽和状態。都心部はまだまだ出店の余地があるという中で、都心部への出店加速していくために、新たな選択肢として非常に有効になるというふうに考えている。

大手チェーンは売上を伸ばすなど好調に推移してきた回転寿司業界だが、2022年は4270店舗、2023年は4201店舗、2024年は4164店舗と、この2年ほど出店数は減少傾向にあった。(参考:日本ソフト販売株式会社「寿司チェーンの店舗数ランキング」)

各社の出店で、地方の幹線道路エリアが飽和状態にあることや、競争が激化したことが一因とみられている。

今回の店舗では、都市部ならではの立地を生かし、アルコールのラインアップも強化。車での来店客が多い地方では難しかった、客単価のアップにも期待している。

くら寿司取締役広報宣伝・岡本浩之IR本部長:
客単価は2倍。まずは中目黒店の様子を見ながらにはなるが、全国の都市部を中心に100店舗目指していきたい。

コストパフォーマンスと、高級路線の二極化が進む外食産業で、都市部シフトを強化することで売上拡大を狙う。

仕入れ力と産地連携で実現するプレミアム寿司

「Live News α」では、消費経済アナリストの渡辺広明さんに話を聞いた。

堤キャスター:
くら寿司のプレミアム店を早速取材されたということですが、いかがでしたでしょうか。

消費経済アナリスト・渡辺広明さん:
福井の「朝獲れ石鯛」を食べましたが、美味しかったです。これは福井県で、朝5時頃に水揚げされたものを、北陸新幹線で東京に運んで夕方には食べることが出来て、380円で食べられるのは凄いことではないでしょうか。

さらに、1度も冷凍されないままの状態で店舗へと運んだ「生本マグロ」など、高級寿司店でも提供が難しいネタを取り揃えてあります。

こうしたプレミアムなネタの美味しさは、大手回転寿司だからこそ、実現できるのではないかと思います。 

堤キャスター:
それは、どういうことでしょうか。

消費経済アナリスト・渡辺広明さん:
回転寿司は、大量仕入れでコストダウンを図っていますが、水産資源の減少が懸念される中、仕入れのハードルは、年を追うごとに高くなっています。

くら寿司の場合、年間契約で船の水揚げを丸ごと買い上げる「一船買い」で、漁師の収入保証を図るなど、水産業の活性化に取り組んでいます。  

こうした姿勢で、漁師の方たちと信頼関係を築けているからこそ、プレミアムなネタの確保につながっているのではないでしょうか。

高級回転寿司は非日常・差別化で都市部に浸透

堤キャスター:
回転寿司の高級化は、広がっていくのでしょうか。

消費経済アナリスト・渡辺広明さん:
回転寿司の店舗数のピークは、2022年7月の4270店舗で止まっています。

人口減やコロナ禍、物価高の影響もあって、地方のロードサイドを中心に、店舗の整理が進んでいます。

店舗の数は減っても、国内で成長を図るには、客単価の引き上げ、つまり、高級化路線は避けて通れないです。これから高級回転寿司は、都市部を中心に広がっていくように思います。

堤キャスター:
高級志向の回転寿司を、成功させるためのポイントはどこにあるのでしょうか。

消費経済アナリスト・渡辺広明さん:
そのお店でしか楽しめない味や、プレミアム感など、きちんと差別化ができていることが重要です。

例えば、地方で人気の回転寿司「根室花まる」は、北海道の海の幸。「金沢まいもん寿司」は、日本海の美味しさを武器に、都市圏に進出して、常に行列ができています。

非日常を経験できるプレミアム回転寿司は、ちょっと贅沢をしたい時に、一人で訪れることができる気軽さがあり、今後の人気につながっていくのではないかと思います。

堤キャスター:
スピードや効率が優先されがちですが、材料の吟味や手間をかけることで、これまでにない価値が生まれるように思います。ちょっとした贅沢の選択肢が増えるのは、うれしいですね。
(「Live News α」5月22日放送分より)