ITに関する知識やプログラミングなどを学ぶ生徒たちが自ら起業し、学習塾の経営に乗り出した。学びの場所はインターネットを介したメタバース、いわゆるデジタル仮想空間。多くの人にAI(人工知能)の活用方法を学んでほしいと立ち上げた生徒たちの取り組みに注目した。
デジタル空間で学ぶ学習塾
秋田市大町にある秋田クラーク高等学院。

ここで学ぶ生徒たちは、高校生でありながら、自らが中心となって会社を起こした起業家でもある。

生徒たちが立ち上げた会社は「if(塾)」。誰でも通えるAIや起業が学べる未来型教室だ。
2024年4月に開業した「if(塾)」の社員は6人。学校の非常勤講師で、ITのコンサルタントも行っている高崎翔太さんとともに活動している。

塾の大きな特徴は、インターネット上につくられた3次元のデジタル仮想空間・メタバース内で学習を行うことだ。「マインクラフト」と呼ばれる仮想空間を作るゲームを利用している。

if(塾)技術責任者・井上陽斗さん:
マインクラフトは世界で5億本売れた有名なゲーム。自分たちが用意したif(塾)のワールドに「エックスロイド」という最新のAIシステムを使っている。それを使うことでITや起業を学ぶことができる。
何でもAIに聞き、何でもできる人に
仮想空間に建物を作っていくことでゲーム感覚でプログラミングの技術を身に付けることができ、20人ほどが学んでいる。

塾ではAIを活用することを重視している。
AIとは、インターネット上にあるデータを学習・解析して新しい文章などを生み出す人工知能。

例えば、AIに「放送分野の仕事に興味がある」と聞いてみると、仕事の内容をわかりやすく説明してくれたり、どんな準備が必要なのかも解説してくれたりする。
塾ではAIをうまく使いこなして、必要な答えを引き出す能力を鍛えていく。

if(塾)塾頭・高崎翔太さん:
AIは言いにくいことでも相談しやすい。それをきっかけにして「どんなことでも聞いてみよう」という感覚になって、「今度こんなものを作りたいから作り方を教えて」「将来こうやりたいんだけどどう思う?」など、何でも聞いたら何でも答えてくれる。その答えてもらう方法を塾で教えているので、それを習得してもらい、何でもAIに聞いて、何でもできる人になってもらいたい。
起業経験を糧にスキルも心も成長を
AIを活用して行っている会社の事業が広告の作成だ。

秋田市内のギョーザ店に依頼されて作成したSNS用の広告画面で使われているアニメーションは、すべてAIに指示を出して作らせたものだ。
if(塾)では、こうした技術を使ってホームページやチラシの作成などを幅広く請け負っている。
塾で培ったノウハウを生かした教室も開いている。

秋田・東成瀬村の小学生を対象にしたプログラミング教室を実施し、子どもたちにプログラミングの魅力をわかりやすく、楽しく伝えている。

こうしたif(塾)の活動は、2023年の年末、若者ならではの挑戦を後押しする秋田県の事業にも選ばれた。社員の生徒たちにとっても、早くから会社を起こして事業を展開することは大きな刺激になっている。

if(塾)技術責任者・井上陽斗さん:
普通の高校生ができないような経験ができていてとてもうれしい。経験することが大事だと思っているので、他の人よりも先にでもいいし、他の人がしないような経験をしていって、自分のスキルも心も成長させていきたい。
IT技術の活用法を伝えることで、多くの人にさらに便利な日常を届けたい。
塾では今後、AIを多くの人が活用できるように様々な年代に向けた講座を開いていくことにしている。
(秋田テレビ)