年末年始の風物詩だった企業の忘年会・新年会が、再び陰りを見せている。
新型コロナの感染拡大で一時激減した企業の宴会文化は、収束とともに持ち直しの兆しを見せていた。ところが今年、コロナ禍後としては初めて「減少」に転じたことがわかった。
開催率は再び5割台に転落

民間調査会社・東京商工リサーチが宮城県内の企業120社を対象に実施した調査によると、今年の「忘年会」または「新年会」を実施すると回答した企業は55.8%にとどまり、去年から4.9ポイントの減少となった。
コロナ禍初期の2020年には16.9%まで落ち込んだ開催率は、その後徐々に回復傾向を見せていた。にもかかわらず、今年は反転。コロナ収束後としては異例の動きとなっている。
理由は「もう求められていない」?
開催を見送る企業にその理由を尋ねたところ、最も多かったのが「開催ニーズが高くない」で69.6%。さらに、「参加に抵抗感を示す従業員が増えた」(26.1%)、「忘新年会が労働時間にカウントされる恐れがある」(26.1%)、「費用削減のため」(26.1%)など、職場の飲み会に対する距離感やコスト意識の変化が浮き彫りとなった。
かつては「上司との距離を縮める場」「新人歓迎の儀式」などとも言われた宴席も、今では“仕事の延長”として敬遠される傾向が強まっている。
一方、開催する企業の本音は…

それでも半数以上の企業は、忘・新年会を実施する予定だ。理由として最も多かったのは「従業員の親睦を図るため」(82.0%)で、次いで「士気向上のため」(42.0%)が続いた。
東京商工リサーチは次のように分析する。
「企業側は親睦や一体感の場としての開催を望んでいる一方で、社員側は“気の合う仲間とのプライベートな飲み会”を優先する傾向が強まっており、両者の間でギャップが生じている」
忘年会は“絶滅危惧種”なのか?

「行きたくない宴会」「無礼講という名のパワハラ」など、ネガティブな印象が先行しがちな忘・新年会。しかし、人間関係の再構築やオフの共感づくりという側面があるのも事実だ。
コロナをきっかけに揺らいだ企業文化は、令和時代の価値観をどう取り込んでいくのか。年末の風景は“曲がり角”を迎えている。
※2025年10月1日~8日、インターネット調査
