毎年春に新酒の出来栄えを審査する「全国新酒鑑評会」。2025年5月21日の発表をもとに、福島県酒造組合では職員が都道府県ごとに金賞を受賞した銘柄の数を集計した。その結果、福島県は金賞受賞数日本一に3年ぶりに返り咲いた。一方で、令和の米騒動がもたらす余波が酒造りに押し寄せていた。
悲願 日本一奪還
2025年の「全国新酒鑑評会」で福島県の金賞を受賞した銘柄は16銘柄で、兵庫県と並び金賞受賞数日本一となった。

喜びに包まれる福島県内。それもそのはず、2022年まで9回連続の日本一を達成していたが、前人未到の10連覇がかかった2023年、金賞受賞数日本一を逃してしまう。

日本一奪還の吉報に、福島県の酒蔵に酒造りを指導し「日本酒の神様」とも呼ばれる福島県日本酒アドバイザー鈴木賢二さんは「県民の方々が日本一復活と言うのは非常に強く望まれておりましたので、それに応えることが出来てありがたい」と話した。
令和の米騒動 酒造りにも影響
新酒の金賞受賞数日本一の喜びにわく福島県だが、酒造りをめぐっては少し心配な話題もある。「令和のコメ騒動」の影響が、日本酒業界にも押し寄せているのだ。

福島市の丹野友幸さんは毎年45トンほどの酒米を生産している。丹野さんは「主食用のコメの価格が、去年は非常に良かった。それに比べて、酒造好適米は例年通りと言うか、なかなか再生産するには難しい金額のまま去年は終わってしまった。そこで高い値段で取引されるコメを選んで作っていくというのは、コメ農家の経営的にはそういう選択肢が出てくるというのは当然」と話す。
酒米の作付面積が減少
これまで主食用のコメよりも高い価格で取引されてきた酒米。しかし、主食用のコメは値上がりを続け、2025年4月の取引価格は過去最高を記録。

丹野さんは酒米の生産を維持しているが、福島県酒造協同組合によると、2025年の県内の酒米の作付面積は、2024年よりも減ることが確実な見通しだ。
酒蔵で酒米の取り合いを懸念
会津坂下町の豊國酒造では、精米した酒米を年間約20トン使用。最も多く使用している「夢の香」の価格は、酒米の生産量が減ったことを受けて、この1年で1500円から2000円ほど値上がりしている。関係者の間では「2026年は2倍ほどになってしまうのでは」との懸念もささやかれているという。

豊國酒造の高久功嗣専務は「秋に予想以下の収量になってしまった場合に、かなり大変なことになってしまう。それこそ、酒米を酒蔵で取り合うようなことが、もしかしたら起こってしまうのではないか。一番怖いのは、酒米を作らなくなる農家が増えてしまうこと。将来的に酒米を作る農家を増やすアクションを、酒蔵から農家に持ちかけることは必要になってくると思う」と話す。

日本酒の価格高騰や酒米の「コメ不足」にも陥りかねない「令和のコメ騒動」。福島の誇りを守るためにも早期の解決が望まれている。
(福島テレビ)