トヨタが独自ソフトウェア「Arene(アリーン)」を新型RAV4に初搭載し、SDV車両の本格展開に乗り出す。音声操作や走行データの収集を通じて安全性や利便性を高めていく方針だ。プラットフォームの共通化による、スケールメリットに専門家は注目している。

トヨタが新型RAV4に独自ソフト搭載しSDV展開へ

トヨタ自動車が独自に開発したソフトウェアを新型車に初めて搭載し、次世代の車を本格的に展開する。

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トヨタが21日に初公開した新型「RAV4」は、6代目となるSUVで2025年度中の発売を予定している。

新型車のポイントは…

丹羽うらら記者:
ヘイ!トヨタ、サンシェードをちょっと開けて。

RAV4搭載の「Arene」音声
サンシェードを少し開けます

今回、トヨタは独自開発する車載用ソフトウェア「Arene(アリーン)」を初めて車に搭載した。

ソフトウェアのアップデートで、安全性能や車内の機能を向上させていく、SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)と呼ばれる次世代の車の本格展開を図る。

RAV4でSDV展開を開始し規模の経済で収益性を強化

「Live News α」では、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
これまでにないソフトウェアを搭載した新型車、長内さんはどうご覧になりますか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
注目すべきは、トヨタのソフトウェアプラットフォームである、アリーンが初めて採用されたことだと思います。

このアリーンは、ソフトウェア開発環境・ソフトウェアの検証ツール・データ収集の3つの要素から成り立っています。これによって、ドライバーの音声による操作や、さまざまな運転状況でも安心して車を走らせることができます。

さらには、ここで得られたデータを、安全性の向上に役立てるなど、RAV4はトヨタのSDVの先駆けとなった格好なんです。

堤キャスター:
そのSDVというのは、どういったものなんでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
自動車の機能をソフトウェアによって制御し、スマホのようにソフトのアップデートによって機能の追加や変更が可能になる車を、SDVと言います。

SDVの実用化をRAV4から始めたことに、このトヨタの力の入れようというのを感じました。

堤キャスター:
それはどういうことでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
RAV4は、トヨタの世界戦略車で、特にアメリカでは最も売れているトヨタ車の一つでもあります。SDVでは一つのソフトウェアを開発できれば、さまざまな車に搭載できて、その価値を上げることができます。

つまり、開発費が固定費なので、車を多く作り、売れば売るほど利益が積み上がる規模の経済がとてもよく効きます。

SDV普及には共通化戦略と主導権の確保が重要

堤キャスター:
その規模の経済を追求するために、どういったことがポイントになるんでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
戦略の鍵は、プラットフォームを共通化して、多くの車で同じSDVを展開していくことです。
最近ホンダと日産が統合の検討をしたり、イタリアのフィアットとアメリカのクライスターが統合して、さらに、フランスのプジョー・シトロエンが加わって、ステランティスが生まれています。

こうした経営統合の背景にあるのが、規模の経済の追求です。世界で最も車を作っているトヨタが今後も王者でいるためには、SDVの分野で主導権を握っていくことが大切になるということです。
(「Live News α」5月21日放送分より)

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