閉山期間となっている富士山で、万全な準備をしない登山者らによる遭難が続発している。中国人学生が携帯を回収するために登頂し、ヘリで二度にわたり救助される事案もあった。救助費用は60万〜80万円ほどかかるケースも多々あると言い、自治体は救助の有料化を検討している。
後を絶たない閉山した山での事故
16日、取材班は富士山に向かった。
車で行ける5合目は、絶景を楽しもうと訪れた多くの外国人観光客で賑わっていた。16日は、あいにくの天気だった。

フランス人観光客:
富士山を見に来たけど、霧で見えない。でも、きれいだからいい!
現在、富士山は閉山中だ。
取材班:
こちらの5合目の登山入り口は、山登りシーズンに向けて現在工事中で、「通り抜けできません」と書いてあります。
夏山期間以外の富士山の登山道は、道路法で全面通行止めとなっている。
取材班:
入山届を出した人が、警備員に止められています。
警備員:
無謀登山の声掛け、注意や警告をしています。

オフシーズンの登山は、あくまで自己責任が原則だ。それにも関わらず、万全な準備をしない登山者たちが、相次いで事故を起こしているという。
2024年11月、ベテラン登山者が富士山の頂上付近で撮影した映像を見ると、富士山は、一面を雪に覆われていた。強風が吹きつけ、ひとたびバランスを崩せば崖から滑落しかねない。
ベテラン登山者によると、この場所で初めて冬登山をした日本人が足を滑らせ事故を起こしたという。後を絶たない閉山した山での事故だ。
救助費有料化議論…救助隊の二次被害懸念も
4月22日にも、富士山で中国人大学生の男性(27)が遭難し、山岳救助隊にヘリで救助された。

しかし、男性は4日後に再び山頂を目指した。理由は、置き忘れた携帯電話を取りに行くためだ。そして、またしてもヘリで救助された。16日の富士山には、頂上まで登り下山してきた中国人登山客の姿があった。
中国から来た登山客:
事故は準備や装備が足りないのが原因だね。経験も足りなかったと思うね。
閉山の時期に遭難が相次ぐ中、富士山の麓の自治体では救助有料化案が浮上している。
静岡・富士宮市 須藤秀忠市長:
(救助は)遭難者負担にすべきではないかと思う。自己責任だと。
静岡県・鈴木康友知事:
救助はしなければならないと思うが、その際の費用は議論の余地はあるかと思う。

一方、山梨・富士吉田市の堀内茂市長は「燃料費などを含めて60万〜80万円かかるというケースも多々ある。これらの費用も全て県民の税金から賄われる」と話した。
外国人の遭難を巡っては、13日にも北海道・倶知安町にある蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山でイギリス人の男女が遭難した。

2人の服装は、半袖とハーフパンツだった。
35年間に渡り、富士山などで山岳救助を行った経験を持つ専門家は、冬山という厳しい環境では、隊員たちが二次遭難する危険性があると指摘する。
南アルプス茶臼小屋静岡市山岳連盟・名倉健児副会長:
(富士山は)独立峰で遮る物がない、日本一強い風が吹く場所です。春はアイスバーン状態で、非常に滑りやすい。冬はすごく気温が下がる。氷点下30度ぐらいになる。救助隊員も自分の身を守るのが精一杯。本当に命がけです。一歩間違えれば救助隊員も(崖に)落ちる。
(「イット!」5月16日放送より)