政府の備蓄米が消費者の元に届いていないことが課題となっているが、その備蓄米は今、ひとり親家庭の支援で大きな役割を果たしている。しかし、その数にも限りがあり、秋以降のコメ支援は危機的な状況だ。
フードバンクに初めて交付された政府備蓄米
新潟県三条市にある『県フードバンク推進協議会』の保冷庫には、備蓄米が保管されている。

農水省はこれまでこども食堂に対し備蓄米を無償交付してきたが、コメの高騰を背景に、今回初めてその対象をフードバンクに広げた。
もともとフードバンクは食品ロスの削減を目的に、企業・個人から余っている食料を預かり、必要なところに届ける活動をしてきた団体だ。
しかし、新型コロナ禍で生活の苦しさを訴える人が急増したのを契機に、フードバンク自らが食料を集め、必要な人に直接届けるように。今回、政府がその活動の広がりを認め、備蓄米の交付対象となるに至った。
新潟県フードバンク推進協議会は、25年8月までに50tの備蓄米の交付を受ける。
小林淳事務局長は「コメの価格高騰が続くこのタイミングで備蓄米の交付に踏み切っていただいたのは本当にありがたい」と感謝する。
「コメが買えない」「カップ麺の割合が増えた」フードバンクに届く声
ひとり親家庭から新潟県フードバンク推進協議会に届くメッセージには、24年のコメ不足のころからコメに関するものが増えている。

「価格が高くコメを食べられない日が多い」「収入が厳しくコメが買えない」「コメが高騰し、カップ麺を食べる割合が増えた」など、子どもに十分にコメを食べさせてあげられないという保護者の訴えが並ぶ。
農水省から届いた備蓄米は5kgずつに分けてひとり親家庭に手渡している。
小林事務局長はその際の様子について、「5kgのコメを手に持ったんだと重さを実感されて、中には涙ぐむ方もいらっしゃる。本当にコメの支援は貴重なもの」と、今、コメがいかに必要とされているかを代弁する。
民間支援はゼロ 農家でさえ余剰のコメがない実情
新潟県フードバンク協議会が25年に交付を受ける50tの備蓄米は、3月から8月の間に分割されて届く予定だが、その一方で、現在、民間からのコメ支援は全くないという。

例年秋になると、農家から多くのコメの寄付があったものの、その農家も「23年の不作から状況が変わっている」と話す小林事務局長。
「農家の方でさえ、余剰の米を抱えているわけではない」というのだ。
新潟県フードバンク推進協議会に登録しているひとり親家庭は、24年5月の時点で8500世帯だったが、24年10月には1万世帯を超えた。
政府備蓄米の交付が終了する25年9月以降、コメ支援を続けることは極めて困難な状況にある。
小林事務局長は「特に年末にかけては経済格差が肌身に感じられ、精神的にも厳しくなる時期。秋冬にどのように支援のコメを確保したらいいのかが一番の課題」とため息を漏らす。
コメの価格はいつ安定するのか。“高くてコメが買えない”事態が長引き、コメが国民を分断するような事態は避けられなくてはいけない。
(NST新潟総合テレビ)