アメリカで2024年、約150回のロケット打ち上げが成功し、その多くを民間企業が担っている。中でもスペースXは通信衛星スターリンクを通じて世界的に存在感を強め、新自治体設立にも影響を与えている。アマゾンの参入や宇宙ごみ対策も進み、政府と民間の連携による宇宙産業の発展が期待されている。
アメリカのロケット打ち上げを民間企業がけん引
宇宙産業で先行するアメリカでは2024年1年間で、約150回ロケットの打ち上げに成功した。その数は5年前の約7倍で、けん引しているのは民間企業だ。宇宙開発の今を取材した。

アメリカ・カリフォルニアで4月29日、スマホを掲げた人々が集まっている。
取材班:
まもなくロケットの打ち上げが行われます。そして一目見ようと多くの人が集まってきています。
4月29日、アメリカ西部カリフォルニア州にあるロケットを打ち上げるエリアから発射されたのは、衛星を使ったインターネット通信サービス「スターリンク」の衛星27基だ。実業家イーロン・マスク氏が率いる民間企業、スペースXのロケットだ。
女の子:
ほんとにすごかった、空が燃えているみたい。
男の子:
すっごく速かった。

次々とロケットが打ち上がるこの場所は、現地ではちょっとした“観光名所”になっている。
スペースXは2019年に初めてスターリンク衛星の打ち上げに成功した。その後、わずか6年間で約7000基を軌道に乗せ、これまでインターネット通信が行き届かなかった世界中の地域にサービスを提供している。
宇宙開発で他社を大きくリードするスペースXは、2014年以降世界での商業衛星の打ち上げ回数の7割近くを占めている。

影響力は、こんなところにも出ている。
取材班:
こちらがスペースXの宇宙基地「スターベース」になります。
5月3日、アメリカ・テキサス州のこの場所で住民投票が行われ、基地や職員の居住エリアが新たな自治体「スターベース市」に昇格した。新市長もスペースXの従業員から選ばれた。宇宙産業は今、政府よりも民間企業のスピード感がけん引する時代となっている。
一方で、ここにきてスペースX依存への懸念もある。トランプ大統領の側近であるマスク氏が3月、ロシアの侵略を受けるウクライナが利用するスターリンクの利用制限をほのめかした。
マスク氏の発言(3月):
私のスターリンクシステムは、ウクライナ軍の背骨だ。私がオフにすれば、彼らの前線はすべて崩壊するだろう。
ウクライナに圧力をかけたとも取れるこうした発言もあり、スペースX独走へのリスクも指摘されている。
アマゾンが約3200基の衛星を打ち上げを計画
こうした中、この市場に新たに参入したのがIT大手のアマゾンだ。

スターリンクから遅れること6年、アマゾンは4月「プロジェクト・カイパー」と名付けた通信衛星の初の打ち上げを行った。数年以内には約3200基の衛星を打ち上げ、地球全体を覆う計画で、2025年後半から通信サービスの提供を目指している。
宇宙分野での民間企業の活躍は、衛星の打ち上げだけではない。宇宙開発で大きな問題となっているのが宇宙に残されたロケットや衛星などの部品のゴミいわゆる「スペースデブリ」の急増だ。
取材班:
カリフォルニア州のスタートアップ企業が作っているサイトです。地球の軌道上にあるスペースデブリの追跡を行っています。

民間企業「LEOLABS」は、地球の低軌道にある直径10cm以上の物体を追跡し、可視化することに成功した。現在は、世界中にレーダーを配置し「スペースデブリ」約1万個を追跡している。スペースデブリは秒速数kmの速度で数年から数百年間、地球の軌道を周回し続け、宇宙ステーションや人工衛星と衝突し、破壊するリスクがある。
LEOLABSシニアテクニカルフェロー ダレン・マクナイト氏:
宇宙ごみの衝突は大変です。宇宙空間を将来に渡って活用できるようにすることは、重要な課題です。

日本の航空自衛隊もこの企業と契約を締結し、データを活用するなど宇宙での民間企業の存在感は急速に増している。
内閣府の宇宙政策委員会で委員を務める山崎直子さんは、こう話す。

内閣府宇宙政策委員会・山崎直子委員:
完全に民間に移行するといっても完全に移行するわけではなく、要所要所で政府側がアメリカにしても支援をしている。政府が取るリスクと民間がそれによって技術を加速させていく部分と、両輪でいけるのが良いと思っている。
日本政府も、宇宙ビジネスの市場規模拡大を目指している。民間企業の育成や支援が、さらなる成長の鍵となりそうだ。
(「イット!」5月15日放送より)