クラシックカーで熊本地震の被災地を巡るイベント『GO!GO!ラリーin熊本』が5月10日に開催された。2回目となった2025年も俳優の唐沢寿明さんが発起人となり、全国から110台を超える往年の名車が集結。クラシックカーを通して復興への思いを一つにしたイベントに密着した。
1924~1973年製造の名車112台が集結
5月10日に開催された『GO!GO!ラリーin熊本』。熊本地震からの復興を応援しようと、発起人で俳優の唐沢寿明さんなどが、クラシックカーで被災地を巡るイベントで、2024年に続き2回目。

スタート地点の熊本市中央区の花畑広場には、1924年から1973年までに製造された国内外の名車112台が集結。会場には1924年式ブガッティタイプ22ブレシアや1968年式トヨタ2000GTなど、「この車を走らせるなんて…」と思わず驚いてしまう名車がズラリと並んだ。

俳優の唐沢寿明さんは「開催することで震災があったことを思い出してもらえるだけでいい。時間がたつと、どうしても記憶から薄れてしまうので…。去年よりも珍しい、見たことがないような車が参加しているので、ぜひ楽しんでもらえれば」と話した。

参加者は「去年楽しかったから(参加した)。チャリティーにも参加できる面がいいイベント」や「参加する方としても〈早く震災からの復興ができれば〉と思っているし、少しでも力になれれば、そして熊本の方々に楽しんでもらえれば…」と話した。
熊本地震の被災地 約200キロをめぐる
クラシックカーが次々と花畑広場を出発した。唐沢さんの愛車は1954年式の『ポルシェ356スピードスター』。妻で俳優の山口智子さんを助手席に乗せ、熊本の街を駆け抜けた。

2025年のコースは花畑広場をスタートし、益城町や西原村、阿蘇市などの被災地を巡る約200キロ。

新たにコースに加わった南阿蘇鉄道の高森駅では、草村大成町長が出迎えた。草村高森町長は「(熊本地震で被災した)この鉄道が7年ちょっとで復旧したが、それまでは地域の田舎の公共交通がなかったので、やはりすごく学生たちは大変だったと思う」と当時を振り返った。

熊本地震で被災した南阿蘇鉄道は2023年7月に全線で運転を再開。〈にぎわいの場〉となった高森駅で、唐沢さん夫妻は来場者との交流を楽しんだ。

草村高森町長は「全国の方々からの支援でこの駅はできているので、そのお礼と『今後、頑張っていく』と伝えた」と述べた。
観客も「かっこいい車ばかり」と見ほれる
往年の名車たちは熊本地震からの復興のシンボル『新阿蘇大橋』を渡り、次の目的地は南阿蘇村にある数鹿流ヶ滝展望所。崩落した旧阿蘇大橋を望むこの場所も、チェックポイントの一つ。

参加者たちが順番待ちをしていると、特急『あそぼーい』が汽笛を上げて横を駆け抜け、全国から元気を届けに来てくれた参加者に感謝を伝えているようだ。

そして、唐沢さん夫妻は2024年に引き続き、南阿蘇村にある熊本地震震災ミュージアム『KIOKU』を訪れた。

熊本地震震災ミュージアムKIOKUの久保尭之さんが「去年GO!GO!ラリーの後に(山口さんが)ユーチューブを投稿してくださったおかげで『見たよ』と言って来てくださるお客さんもかなり多くて、本当にありがたかった」と伝えると、唐沢さんは「そういうきっかけがあればね。いろいろ起きたことも実際に見ていかないと分からないから」と思いを寄せた。

2024年12月に全ての復旧工事を終えた阿蘇神社では、参加者たちが参道に愛車を並べて安全を祈願した。

一堂に会したクラシックカーに、訪れた人たちは「今と違って一風変わったかっこいい車ばかりだったので、見ほれた」や「その時代にタイムスリップした雰囲気になる」と話す。
観客の熱い歓迎に参加者も驚き
クラシックカーはそれぞれのチェックポイントを通過し、花畑広場へと帰ってきた。2024年以上の盛り上がりを見せた『GO!GO!ラリーin熊本』の沿道には多くの人が集まり、復興への思いを一つにしていた。

来場者は「皆さんのおかげでここまで来られたので、復興の第1歩として、こういうイベントができてよかった」や「震災直後の倒れている楼門などを見ているので、これだけ復旧したのを皆さんに知ってもらえることはいい」と話した。

また、参加した人たちは「(沿道の)皆さんが手を振ってくれるので、とてもいい雰囲気で走れた」や「どこに行っても手を振るのが疲れるくらい、皆さんいるので驚いた。僕らも阪神淡路大震災を経験しているので、(熊本も)復興してもらいたい」と思いを述べた。
「来年は震災から10年、企画を考えている」
唐沢さん夫妻も充実した表情で振り返る。

唐沢寿明さんは「人がすごい。去年の倍くらいいる。記憶を呼び起こすという意味もあるし、お祭りの一環として皆さんに楽しんでいただければいい」と、多くの観客に驚いたようだ。

また、山口智子さんは「体中(使って)待っていてくれて、通り過ぎるたびにワーッて迎えてくれてうれしかった。パワーをもらえた」と、参加した側も観客の熱気が伝わるイベントだったようだ。

唐沢さんは「僕らも楽しめたし、来年は震災から10年ということで、僕らも色々な企画を考えているので、皆さん、また来年も遊びに来てほしい」と、2026年の熊本地震から10年への思いを語った。

復興を応援するクラシックカーの力強い走りは、多くの人に笑顔を届けた。
(テレビ熊本)