何もない空間に感触?NTT新技術を体験
何もない空間に、手で触れた感覚をつくり出す、NTTの新たな技術を取材した。

何もない空間で手をかざしている記者。一体何をしているのか…

山下あす奈記者:
白い玉はつるんとした感触が手のひらに伝わります。黄色はサラサラとしてますね。そして、赤に変わると、ザラッと粗い感じが伝わってきます。

13日、NTTが公開したのは、何もない空間にさまざまな感触を生み出す装置「超音波触感シンセサイザ」。超音波を使った新技術だ。

超音波を集めた焦点を、振動させて皮膚に刺激を与えると、感触はあるものの、その力は弱い。一方、回転させながら刺激を与えると、刺激される範囲が広がるなど、超音波の「感じられる力」が20倍程度にまで増強されるということを発見した。
この結果を活用して作られたのが、今回の装置だ。

たくさん並んだ黒い部分から、周波数の強さや動きを変えた超音波を出すことで、「つるつる」「ざらざら」といった、さまざまな感触の再現を実現した。

特別な機械を体に装着する必要がないため、遠隔医療や、ゲームなどへの応用を目指すとしている。
公開された最新技術は、他にもある。周囲がざわざわする会場でリポートするが…

山下あす奈記者:
こうした騒がしい環境でも、こちらのマイクが私の声だけをクリアに抽出することができます。

記者リポートは雑音にまぎれて聞こえにくくなってしまったが、生成AIと最先端の音声強調技術を活用したシステム「SpeakerBeam」は、その人の声だけを抽出できる。

事前に声を登録するだけで、雑踏の中や、複数の人が同時に話す中でも利用できるため、今後、電話での通話や、補聴器などでの活用が期待されている。
テクノロジーの力で、生活をより便利により楽しくする、NTTの挑戦は続く。
触れる・聞こえるを変える“非接触×AI”の体感
「Live News α」では、暮らしを変えるテクノロジーに詳しいIoT NEWS代表・小泉耕二さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
何もない空間に、何かを手で触った感覚を生み出す技術、小泉さんはどうご覧になりますか?

IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
バーチャルリアリティの話題となると、多くの場合、視覚と聴覚に関する没入感の話題が多いのですが、世界の展示会、例えばCESなどに行くと、触覚の展示も多くみられます。
ただし、これまでの触覚に関する技術は、グローブのようなものをつけて、刺激を受けることが一般的でした。
それが今回の発表では、超音波を使って空間に、何かに触れた感覚を再現しているということで、とても興味深いです。
堤キャスター:
どんな分野での活用が期待できるのでしょうか?
IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
没入体験が楽しめるゲームなどはもちろん、アパレルのECで洋服の肌触りを再現するなど、多方面で利用シーンが考えられそうです。
堤キャスター:
騒がしい環境でクリアな音声が得られる技術については、いかがですか?
IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
実はこれ、2018年頃から一部実現されている技術で、まず、あらかじめ取り出したい人の音声情報を収録しておきます。
その人の音声をクリアにしたい映像があるとした時、収録した音声データを使ってその人の音声を抜き出し、AIを活用して高品質な音声を作り出すというものです。
今後は、レストランのような賑やかなところで、スタッフがインカムで指示を行う場合や、大きな音がする建設現場などで活躍しそうです。
視・聴・触覚の融合で没入型体験が進化へ
堤キャスター:
私たちの生活で活用されるのが、待たれますよね?

IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
空間に手で触れた感触を生み出す技術の実用化は、これからというところかと思います。
個人的な経験としても、視覚・聴覚・触覚を使って仮想空間に没入すると、没入感が大きいということがありました。
2030年までに拡張現実の市場は、1600億ドルにものぼるといわれており、特に、昨今のAI技術との融合によって、より自然で没入感の高い体験が生み出されそうです。
堤キャスター:
空間で何かに触れる技術で、私たちのコミュニケーションやエンタメが大きく変わるかもしれません。新たな体験の提供によって、さまざまな可能性が広がることを期待したいです。
(「Live News α」5月13日放送分より)