2024年、秋田・仙北市に地元産の野菜にこだわった定食屋がオープンした。店主の女性は店を切り盛りする傍ら、こども食堂もスタートさせた。市外から訪れる人はもちろん、地域に住む人たちに地元の採れたて野菜のおいしさを伝えようと奮闘する女性を紹介する。
野菜の食べ方伝えるために開業
桜の名所として知られる仙北市角館町。

桜の季節には毎年、県の内外から大勢の観光客が訪れ、美しい花を楽しんでいる。
その角館町に2024年1月、「食彩 舞桜(まいざくら)」がオープンした。

店主は林崎栄美さん(43)。仙北市で生まれ育った林崎さんは、訪問介護の仕事に就き、高齢者の家事などをサポートしてきた。14年前、母親の死をきっかけに仕事を辞め、実家の農業を手伝うようになった。

トウモロコシやエダマメなどの生産に取り組む傍ら、県内の女性農家が地域の活性化を進める「あきたアグリヴィーナスネットワーク」に参加。メンバーが生産した野菜や加工品をマルシェなどで販売する中で、「仙北市の野菜をもっと味わってもらいたい」と舞桜を開業した。

野菜を販売する中で、客から「この野菜はどうやって食べるのか」と聞かれることが多かったという林崎さん。「自分で提供して野菜の食べ方を教えたり、色々な野菜を知ってもらいたいと思った」と開業のきっかけを語る。
地元食材たっぷりの日替わり定食
舞桜のメニューは“日替わり定食”のみ。

すべて手作りで、地元の食材にこだわった料理が並ぶ。田沢湖産のホウレンソウを使った野菜サラダに、雪の下ダイコンを使った煮物など、旬の野菜を味わうことができる。

野菜たっぷりのカツカレーは、客のリクエストに応えて日替わり定食に加えた。
こども食堂での体験を次の世代へ
3人の子どもをもつ林崎さんは、畑仕事に子どもの弁当作り、さらには店の営業と大忙しだが、新たな取り組みも始めた。

それが『こども食堂』だ。地域の子どもたちにおいしい野菜を食べてもらいたいという思いから、2024年3月にスタートさせた。
「自分の子どもも色々な人に世話になってきた」と話す林崎さん。世話になった人からは「あなたが下に返していけばいい」と言われたという。

その言葉を胸に秘めて店を開業した林崎さん。
「小学校のそばで店を始めたのをきっかけに、子どもたちが声をかけてきてくれるようになった。その中で『おなかがすいた』と言ってくる子どもがいて、それなら定期的に“こども食堂”を開催したいと思った」と振り返る。
こども食堂は毎月第4金曜日に開いていて、林崎さんの店で子どもたちに食事を提供したり、イベントを行ったりしている。いまではこども食堂の開催日以外でも、放課後に自然と子どもたちが集まってくるようになった。

こども食堂を利用する小学生は「ご飯を食べたり遊んだりするところ。イベントではケーキを作ったりする。作るのは難しかったけどおいしかった」と笑顔を見せる。
林崎さんは「みんな笑顔でご飯を食べて、みんなで宿題やって、子どもたちが大きくなった時には、また次世代に恩返ししていってくれるようになってほしい」と将来を見据える。
「採れたて野菜の味を知ってほしい」
林崎さんが抱くのは、舞桜やこども食堂の活動を通じて「地域の人や外から訪れる人たちに、この地域の食の魅力を味わってもらいたい」という思いだ。

食彩 舞桜・林崎栄美さん:
採れたての野菜を食べたことがないという子どもや大人が多く、味が全然違うことを知ってもらいたい。とりあえずここに来て、みんな元気になって戻って行ってもらいたい。おいしい野菜をいっぱい食べに来てくれる人が増えてほしい。

仙北の味をより多くの人に届けるため、今後は地元の農家が生産した野菜や加工品なども店で販売していきたいという林崎さん。
これからも食を通して、地域と子どもたちを元気にしていく。
(秋田テレビ)