対馬市の寺から盗まれたあと、韓国に持ち込まれた仏像が13年ぶりに戻り、歓迎の法要が営まれた。今後は対馬博物館で展示、保管される。

13年ぶりに対馬に戻った仏像
12日午前、仏像を乗せたトラックが対馬市の観音寺に到着した。

檀家たちが拍手で迎えた。
対馬市の観音寺に約13年ぶりに安置されたのは、長崎県の有形文化財「観世音菩薩坐像」だ。

檀家など約30人が集まり、午後1時からは仏像を歓迎する法要も執り行われた。
檀家は「もう、うれしかったに限る」と喜びをあらわにした。
観音寺の前住職である田中節孝さんも「ようやく安心できた」と語る。「観音寺にあるのがとても自然。非常によかったと思う」と胸をなでおろした。
「やっと取り戻したよ」
観音寺の村瀬総代長は、盗難された当時、総代長を務めていた父の遺影を手に、取材に応じた。

村瀬辰馬 総代長:『やっと取り戻したよ』って言いたいですね。『よかった、うれしい』と言うんじゃないですか。
仏像が盗まれたのは2012年のことだった。窃盗団は仏像を韓国国内で転売しようとしたが、警察に逮捕された。仏像は無事に返るかと思われたが…。ここで現れたのが、韓国の浮石寺だ。

「仏像は倭寇が朝鮮を襲った際に不当に持ち出したもの」などと所有権を主張し、裁判を起こしたのだった。

2023年、韓国の最高裁で観音寺の所有権が認められたものの、返還までには約13年の歳月がかかった。
田中節竜住職は「やっぱり長かった。ようやくという思いが一番ですね」と語る。
博物館で保管へ「心の中に観音様がいる」
今後も盗難される可能性がぬぐえないとして、仏像は観音寺ではなく対馬博物館で保管される予定だ。

この決定に檀家は「止めることもできない」と寂しさを隠せない。ある檀家は「もともとの御本尊様だからね。ここにないということは何の効果・効能もない。だけど仕方がない」と話す。
田中住職は「心の中には観音様がいるんだということを伝えたい」と言う。「観世音菩薩坐像」は5月16日から6月15日まで、対馬博物館で特別公開される予定だ。
(テレビ長崎)