分娩ができる医療機関が姿を消した笠岡市に出産から育児までをサポートする助産院があります。その日常を追ったドキュメンタリー動画が完成、母親や助産師たちの思いに迫ります。
今、まさに生まれようとしている新しい命。助産院を初産の場所に選んだ母親。
(動画インタビュー)
「ありがとうの気持ちがいっぱいで、自分だけで頑張ったという感じが本当にしない」
医療行為ができない助産院での出産に不安を抱く父親。
「やっぱり病院の方が良かったのかなと。ちゃんと生まれてくれと思っていた。結果生まれたから良かったけど・・・」
「わたしたちのお産ダイアリー」。助産院の日常に4カ月間密着した約1時間のドキュメンタリー動画です。
笠岡市ののどかな住宅地に「晴れの国お産所」はあります。多い月で5件、年間で約40件の出産に携わっています。
(晴れの国お産所助産師 国定由美子代表)
「ここの部屋で机を取っ払ってお産している」
助産院には医師は常駐しておらず、陣痛促進剤の投与や帝王切開などの医療行為はできませんが、産婦人科のある医療機関と連携し、適切な処置を受けられるようにしています。
(晴れの国お産所助産師 国定由美子代表)
「出産は不安なものでは決してなく、女性が強くなるチャンス。それを側で見ることができて私たちも楽しい」
アットホームな空間でより自然な出産に臨めるのが助産院の特徴です。今、その重要性が高まっています。
動画制作を企画したのは晴れの国お産所で出産経験のある1人の母親です。
5人の子供を育てる井原市の唐木佑香さん。
(唐木佑香さん)
「井原・笠岡は子供が産みたくても分娩できる病院がなくなってしまった今、助産院があるということをもっと多くの人に知ってもらいたい。ただ単に助産院を知る機会が少ないと思う」
岡山県内で分娩ができる医療機関は少子化を背景に年々減少していて現在37カ所。笠岡市では唯一の産婦人科医院が2023年に閉業し、県南西部の井笠地域で分娩ができる医療機関が姿を消しました。
唐木さんは2024年、四男の雄心くんを出産。リスクが伴ったため倉敷市の病院での分娩で、より一人一人に寄り添うことができる助産院との違いを感じました。
(唐木佑香さん)
「病院ではしょうがないのですが、助産師や看護師が毎日変わるから、どの人を信頼して伝えれば良いか分からない。思いを吐露したいけどできないというもどかしさがあった」
県内の助産院での分娩件数は全体のわずか1.3%です。
助産院を生まれる場所の選択肢の1つに…唐木さんは寄付などで約100万円を集め広島の映像制作会社に依頼。助産師たちも唐木さんの思いに賛同し全面的に協力していて5月22日に上映会を開くほか、5月30日からは広島県福山市の映画館で順次上映するということです。
(助産師 出井淳子さん)
「お産をする場所として助産院があることを知ってほしい。命について考えるきっかけになったらいい。」
(唐木佑香さん)
「年齢問わず子供から高齢者まで 命のある全ての人に見てもらいたい」
助産院のありのままの日常を描いた「わたしたちのお産ダイアリー」。命の原点に向き合うきっかけを与えてくれています。