2024年12月20日、川崎市に住む岡﨑彩咲陽さん(20)が行方不明となり、5月1日に、元交際相手の白井秀征容疑者(27)の自宅から、バッグに入れられ一部白骨化した状態で見つかった事件。

警察は、3日にアメリカから帰国した白井容疑者を死体遺棄の疑いで逮捕しました。
調べに対し白井容疑者は「間違いありません」と供述、事件発覚前の最後の事情聴取では「岡﨑さんにつきまといをした」という趣旨の説明をしていたといいます。

2024年の4月頃から交際を始めたという彩咲陽さんと白井容疑者。
しかし知人によると、翌月には関係が悪化し、白井容疑者のストーカー行為が始まったといいます。

6月には、白井容疑者から逃れるために祖母の家に避難したといいますが、白井容疑者は祖母の家まで押しかけてきたといいます。7月に撮影された映像には、ドアを「ドンドン」と激しくたたく音が。

彩咲陽さんの知人:
とりあえず執着がすごくて。
(彩咲陽さんの)おばあちゃんちに彩咲陽ちゃんと泊まっていた時に、白井が彩咲陽ちゃんに連絡かけてきて、ずっと彩咲陽ちゃんがシカトして、もう別れた後だから。無視しても、それでもすごい電話が来て。そしたら家の所まで来て、ずっとドアを「ドンドンドン」ってずっとやっていて。そういうのもあったりとか、もうなんて言うんだろう…「許さない」みたいな発言もずっとしてた。

そして次第に、白井容疑者の“執着”は暴力として現れるようになったといいます。
神奈川県警によると、彩咲陽さんは、2024年9月、白井容疑者から「殴られ、蹴られ、ナイフのようなモノで脅された」と被害届を提出。10月には一転して被害届を取り下げたといいますが、彩咲陽さんの友人によると、これは白井容疑者に脅されてのことだったといいます。
11月にはストーカー行為がエスカレート。彩咲陽さんがアルバイトをする店の付近でも、白井容疑者が待ち伏せるような姿が、毎日目撃されていました。

彩咲陽さんの知人:
去年12月から相談を受けていたんですよ。「ストーカーが怖い、殺される」って、その直前に警察にも何回も相談しているって聞いてたんですよ。

行方不明になる直前の12月12日に撮影された映像には、彩咲陽さんの祖母宅周辺をうろつく白井容疑者とみられる人影が…。

そして、12月13日に20歳の誕生日を迎え、そのわずか6日後の20日、突然行方不明となった彩咲陽さん。
行方不明になってから2日後に、警察は白井容疑者の自宅を任意で捜査しましたが、「食事をしているから、そこはやめてくれ」と拒まれたため、遺体が見つかった床下収納のある部屋の捜査はできなかったといいます。
元神奈川県警捜査一課長「ストーカー事案は命の危険が常に伴う」
行方不明になる直前の12月9日から20日の朝までに、彩咲陽さんは警察に対し、「白井容疑者が家の周りをうろついている」と通報するなど、9回にわたり相談していました。

しかし、警察はいずれも「ストーカー事案」ではなく「DVが疑われる事案」として扱い、白井容疑者に聴取を行っていませんでした。

何度も警察に相談があったにもかかわらず、なぜ事件は起きてしまったのか。
元神奈川県警捜査一課長でストーカー対策の強化に尽力してきた鳴海達之氏は…。

元神奈川県警捜査一課長 鳴海達之氏:
2年前にも同じような事件があって、人身安全対策課というところが特化した組織として運用しているんですが、実は12年前にその前身組織を私たちで作ったんです。その理由は、このようなことを二度と起こさないためなんです。
(それでも)また起きてしまったので、なぜこのような事件がまた起きたのかということは検証していって、今後このようなことがないように、「もっとこんなことができたのではないか」ということをやっていかなくてはいけないと思います。

――警察は「2人は何度も復縁していた」と主張していますが、それで介入できなかったなどあるのでしょうか?
元神奈川県警捜査一課長 鳴海達之氏:
まず、「民事不介入の原則」なんてものはもうありませんから。相談があればその中で犯罪になるものはピックアップして対応していくというのが、数十年前から警察はそういうスタイルですから。疑いがあればすぐに介入します。
被害届の取り下げに関しても、(被害者)1人ならなかなか冷静な判断はできないでしょうし、背景が何か分からないので、詳しく説明を聞かなくてはいけないんです。今後のことも丁寧に説明して、「こういうふうに進んでいきますよ、それはあなたの命を守るためです」と説明をしていると思うんですが、背景にある暴力などに支配されてしまうと、なかなか「いやもう結構です」となってしまうケースもあります。

元衆院議員 佐藤ゆかり氏:
これだけストーカー被害というか、怖いと警察に電話をしている事実がありながら、なぜ警察がストーカー行為に対する禁止命令を出さなかったのかと。
そもそもストーカー行為を認めていないわけですよね? 被害届を出して、それを取り下げたりもしていますが、ストーカー行為にあった人って典型的に脅されると怖いので、恐怖の中で精神的に支配されて、それで結局を取り下げざるを得なかったというような状況も、十分警察は想像しなきゃいけなかったと思うんです。

入江陵介氏:
被害者が被害届を取り下げた場面で「大げさに話した」と言うところで、それがそもそもなかったのか、大げさの度合いというものを警察がもう少し話し合っていれば、ナイフが登場している時点で身の危険があるものなので、もっと踏み込んで話し合ってもらえたら、防げたのではないかなと。

MC谷原章介:
暴力をもって強制されているかもしれないということを、考えるべきですよね。
元神奈川県警捜査一課長 鳴海達之氏:
本人は(容疑者に対して)怖い部分があるからそれ以上説明ができないので、「本当にそれでいいのか」と、親族も入れてちゃんと話を聞き「今後こういうふうに進んでいく」と説明しなくてはいけないんです。
ストーカー事案というのは、いつ急変するか全く想像できません。いくら捜査をしていても、瞬間にナイフで刺すということもあるので、命の危険が常に伴うんですよね。だから結構神経をピリつかせてこのような事案を扱うのですが、だから家族にも理解してもらわないといけない。それをこの機会にやってほしかったなと。

――ストーカー規制法は現在“非親告罪”ですが、警察として積極的に運用することはできなかったのか?
元神奈川県警捜査一課長 鳴海達之氏:
凶器を示した暴行は、ストーカー規制法とは全く別物だと思っていてください。暴行に関する捜査は刑事課で進める、ストーカーの方は生活安全課で進めてと、同時並行的に進めるんです。だから、片方が止まったら両方が止まるのではなく、片方の被害届が取り下げられても、ストーカー対策の方は進んでいくというやり方をするんです。
身柄が取れる材料があるときに、逮捕しておけば(勾留期間の)10日のうちに避難をさせて、その間に被疑者に対してこういう行為をやめるよういくらでも説得はできるんです。そういう絶好の機会だったと私は思っています。
(被害者が行方不明になる前に容疑者が)自宅の周辺をうろついていたと。うろついていたら、そこにいさせちゃいけないんです。すぐにでも警察署に一時的に保護して、そこから別の避難先を探していくということをしていかないと、命が危ないわけですから。どうしてそういう対応をしなかったのかと、個人的には思っています。自宅の周りをうろついているという緊迫性があるのだから、これはもう最優先ですよ。

元衆院議員 佐藤ゆかり氏:
そもそもうろつくという行為がストーカー行為に該当しますよね?12月12日に電話で通報したときに、なぜストーカー行為として警察が取り合わなかったのかというのも、私は理解できないです。
元神奈川県警捜査一課長 鳴海達之氏:
おっしゃるとおりで、ストーカーとしてやれるチャンスだった。その芽を摘んでしまったんだと私は思っています。誰か警察官を行かせて、「ストーカーでやれるからやろうよ」という話をして、保護して親族を呼んでこういうふうにやっていきましょうという話は、ここで絶対できたはずなんですよ。それをどうしてやらなかったのか?しかも自宅の周りをうろついているこんな危ない状況で…。誰かが行って話を聞いて、一緒の車に乗せて、署で一度保護して次の手を考えようとしないといけない場面だったなと。

MC谷原章介:
被害に遭っている本人は暴力で支配されている可能性があるから、なかなか本人が脱却して洗脳が解かれて駆け込むことって難しいじゃないですか。周りの家族がいくらすすめても、怖いから、そんな人じゃないからと被害が申告できない。
大事なことって今回みたいに、連れ去られる前、9回の通報の時にどれだけ警察が能動的に押さえられるかだと思うんです。それは法の運用の仕方をもう一度考え直すことはできないですか?
元神奈川県警捜査一課長 鳴海達之氏:
もう重大な結果が出ていますから、踏み込んだ対応を取らざるを得なくなっていくと思います。いずれにしても。命を守る組織ですから。
(「サン!シャイン」5月5日放送より)