新年度が始まってから1カ月。街の人からは、先輩社員と新入社員の距離感に対し、様々な声が聞かれた。こうした中、新入社員が先輩社員をランチに誘うとランチ代を会社が負担するというユニークな取り組みを導入している企業を取材した。
「食事に誘いづらい…」先輩社員の悩み
多くの通勤客が行き交う新潟駅前。
コンプライアンスの強化に取り組む企業が増えてきている中、街の人は先輩社員と若手社員の距離感について、どのような感想を持っているのか…

20代女性:
すごく仲が良い、一緒にご飯も行く。みんなも「行きたいです」と言ってくれて、何人かとしょっちゅう行っている。
50代女性:
たまに「どこか食べに行こう」とかお互いに何となく話が盛り上がって出てくる。若手社員と壁はあまり感じない。
新入社員を迎え、1カ月が経つ中、「仲が良い」と答える人がいる一方で、30代以上の“先輩社員”から聞かれたのは「新入社員を食事に誘いづらい」という悩みだ。
30代男性:
断られて嫌な感じが出たら極力声はかけない。空気を読むようにしている。
30代男性:
最近このご時世なので、やっぱり誘いづらいというのはある。タイミングで後輩も行ってくれるという時は行くようにしている。
60代男性:
かなり年が離れていると難しい。意識的なギャップとかもあるし、何を求めているのか、どれだけの関わり合いを持ちたいのか、なかなか分からない。
新入社員は「誘われたらうれしい」「仲良くなりたい」
実際に、この春入社したばかりの新入社員からは…
新社会人:
うれしい気持ちもあったり、ちょっと面倒くさいなというのもある。
その一方で、新入社員の中にも「食事に誘われたら行きたい」と考える人は少なくないようだ。
新社会人:
1回だけ食事に行った。誘われたときは、うれしかった。
新社会人:
誘われたらうれしい。僕だったら行く。機会があれば食事に行きたい。
新社会人:
面倒くさい気持ちはない。仲良くなれる機会だと思って、どんどん参加したいと思っている。
新社会人:
仲良くなりたいし、先輩が1年目の時にどうやって過ごしていたかとかそういう機会に聞きたい。
“誘いたい”先輩社員と“誘われたい”新入社員。互いに距離の詰め方に苦心しているようだ。
それぞれの悩み解消へ…会社が“ランチ代”を負担!
こうした中、マーケティングを行う長岡市の企業では、新入社員が先輩社員をランチに誘うと、その代金を会社が負担する制度を導入している。
グローカルマーケティングの森本寛子取締役CCOは「より多くの人と多くのコミュニケーションをとってもらうために誘いやすくする工夫の一つ」と制度導入の背景について説明する。

一般に5月になると慣れない環境などに悩み、離職する人が増加する傾向にある。
フードデリバリーサービスを展開する企業が20歳以上を対象に実施した社内コミュニケーションなどに関する調査では、回答者の3割以上が五月病のような症状を感じたことがあると回答。

その原因として20代では「連休明けの仕事が忙しかった」「慣れない職場で不安だった」に次いで「上司とのコミュニケーションがうまくいかなった」が多くなっている。
こうした五月病を防ぐための対策の一つとして導入されたこの制度。誘い方に制限はなく、新入社員は自分の好きなタイミングで先輩社員を誘うことができる。
新入社員と先輩社員でランチ!距離感に変化は?
この日、入社2カ月の近藤俊樹さんが制度を活用して、入社12年目の先輩社員・堀美穂さんをランチに誘った。

近藤さんは「ランチに行くのは1対1。一番距離を縮められる機会。話したことがない方と仲良くなりたいという気持ちが強く誘った」と堀さんを誘った理由を話す。
部署が異なるため、仕事以外で2人で話す初めての機会。
お弁当を買いに行く道中では、会話にぎこちなさがあったが、食事が始まると徐々に2人の距離は縮まり、会話が弾む。

新入社員が先輩社員を誘うことで、先輩のランチ代も会社負担となるため、おごる・おごられるなど金銭面の心配がないのもこの制度の利点だ。
ランチを終え、近藤さんは「楽しかった。普段話すことがなかったからこそ、堀さんのことを結構知ることができたと思う。きょうが最後ではなく、また誘う」と話し、堀さんも「一緒にお弁当を買いに行った時と終わったあとの表情を見ると、少し心を許してもらえたかなと」とお互いに笑顔が見られた。
新入社員・先輩社員、それぞれが距離の縮め方に悩みを抱える中で、新たな制度や取り組みで悩みを解消することが求められているのかもしれない。
(NST新潟総合テレビ)