2024年夏、パリオリンピック卓球女子シングルスで、銅メダルを獲得した北九州市出身の早田ひな選手。その後輩が、僅か8歳にして国際大会で優勝した。将来、オリンピックで金メダル獲得を夢見て、新たな才能が輝きをみせ始めている。
国内で7人“ナショナルチーム”入り
算数のドリルに打ち込む女の子。その指先には、きれいなネイルアートが…。「お姉ちゃんが買ったお化粧セットでやってる。ママのリップも勝手に盗んでやってる」と微笑む。おしゃれが大好きな小学3年生、西尾友利ちゃん(8)だ。普段の面影は、どこにどもいる普通の女の子が、いざ卓球となるとその姿はアスリートへと変貌する。

「早くやるよ!」と父親の公秀さんを急き立てる友利ちゃん。自宅のリビングにセットされた卓球台で、元卓球選手だった公秀さんのボールをいとも簡単に打ち返す。

公秀さんも汗だくで娘に付き合うものの、なかなか大変な様子だ。ラリーを通して、めきめき腕を上げていく娘に、「そろそろ自分が相手をするのは、難しくなってきた」と嬉しそうに話す。

友利ちゃんの腕前は、どれほど凄いのか。
「西尾友利です。ペットボトルチャレンジ1球で当てるぞ!」。

テレビ西日本の番組コーナーの「ペットボトルチャレンジ」に挑戦してもらった。「行くよ!」と気合を入れて友利ちゃんが強く振り抜いた打球は、見事にペットボトルの真ん中を打ち抜き、チャレンジに成功。ショットの正確さを証明してみせた。

余裕の表情の友利ちゃん。それもそのはず、友利ちゃんは、現在、国内で7人だけの10歳以下のナショナルチームのメンバーなのだ。

初めての海外 8歳で国際大会優勝
2025年3月に韓国で行われた国際大会では、まだ8歳ながら11歳以下の選手が出場するカテゴリーで決勝へ進んだ友利ちゃん。

地元、韓国の対戦相手を強気なプレーで圧倒し、堂々の優勝を果たした。初戦から決勝まで、対戦相手が全員、友利ちゃんより年上の選手ばかりだったが、ひるむことはなかったという。

優勝インタビューでは、「韓国で一番好きな料理は何ですか?」と韓国語で質問され、スマートフォンの翻訳アプリを使って「キンパ!」と答えた。友利ちゃんに聞くと、「キンパしか知らなかった」と笑った。

大会は、友利ちゃんにとって、初めての海外。しかも家族が同行しない単身での国際大会だったが、そんな初めてづくしの経験を乗り越え、WTT(World Table Tennis/ワールド・テーブルテニス)規模の大きな国際大会での優勝。大きな自信となったようだ。1番の目標を尋ねると、「オリンピックで金メダル!」と即答。友利ちゃんの将来の夢は、既に決まっているのだ。

目標は五輪で金メダル
週末には、車で1時間ほど離れた「石田卓球クラブ」(福岡・中間市)へ通う。憧れの存在でもあるオリンピックのメダリスト、早田ひな選手も中学生だった頃、日々、このクラブで汗を流していた名門クラブだ。クラブ内には、「トップアスリートになるまでには、3万時間が必要」との言葉が貼られている。体格差が影響しにくい事もあり、低年齢化が進む卓球界では、「いかに早く競技を始め、いかに毎日、長い練習に取り組めるかが重要」と選手や家族を鼓舞している。

友利ちゃんが一緒に練習するのは、ほとんどが中学生。そんなお姉さんたちに甘えることができるのも石田卓球クラブでの楽しみの1つ。

しかし、当然ながら、練習は厳しい。この日の相手は、中学生の男子。しかも2025年春の全国大会団体戦で、優勝したメンバーだ。

それでも友利ちゃんは、時折、笑顔を浮かべながら球を打ち返す。男子の強い球に慣れることで、普段の試合では自由に打てるようになる。この環境を求めて、自宅からは距離がある石田卓球クラブまで通っているのだ。

「足出して、足出して」友利ちゃんに声をかける石田卓球クラブ代表の石田弘樹さん。かつて早田選手も指導した。

石田さんは、「友利ちゃんは、練習も本当に真面目にやるので、10分経ったら汗だくになるくらい集中してやれる。自分が強くなるのと同時に、卓球を楽しんでいると思う。それが一番強いかな」と語る。「早田選手の場合は、世界に20歳で出るのを目標にして卓球を作ったが、友利ちゃんは、自然に自分のスタイルでやっている。将来、世界に出て行けばいいかな」と期待を寄せる。

この日の練習も「楽しかった。勝つ時とかラリーが続くところが好き」と話す友利ちゃん。
練習後は、とにかくお腹が空いてたまらない。食欲もかなりのものだ。この日は、お母さん手作りの魚料理。大盛りのご飯をペロリと平らげ、すぐにお代わりした。

家族の支えを背にオリンピックの金メダルに向けた長い道のりを歩み始めた友利ちゃん。これからの活躍に注目だ。
(テレビ西日本)