北海道知床半島沖で観光船が沈没した事故から、4月23日で3年となる。
「再生への道」を探る地元の取り組みといまを取材した。
2022年4月、知床半島沖で起きた観光船「KAZU1」の沈没事故。
乗客・乗員26人が冷たい海に投げ出され、20人が死亡、6人の行方がいまもわかっていない。
まもなく3年―いまだ事故の真相はわからず、観光地・知床にも影を落とし続けている。
間近に迫った観光シーズン―観光客は戻るのか
観光シーズンを間近に控えた知床。
救命いかだの設置義務化を受けて、ウトロで観光船を運航する会社では安全対策に余念がない。
沈没事故やコロナ禍が起きる前のハイシーズンには1か月で3000人の乗客がいたが、いまは6割ほどにとどまっている。
知床旅行への北海道民の感じ方を札幌で聞いてみると―
「問題はないと思うがああいうこと(事故)があるとどうしても行きづらい」
「どうしても(事故の)イメージがあるので難しい」
「情報をまとめてからあと1~2年したら行ってみたい」
事故のイメージは和らぎつつあるが、完全に払拭するまでには至っていないようだ。

知床旅行を取り扱う代理店でも―
「事故後から現在まで停滞している印象で遊覧船、小型船舶に関して乗りたいというのはない」(ニッポン旅行サービス 高谷悠希さん)
知床データセンターによると、年間180万人ほどあった知床地区の観光客数はコロナ禍の2020年にはほぼ半減。
さらに観光船の沈没事故が追い打ちをかけた。
ただ、2021年からは少しずつ増加している。

「去年あたりはインバウンドもあって戻ってきた」地元漁師が語る「再生」の兆し
「事故のことを何も知らないインバウンドの増加で知床に行く人も増えるし大自然や車からクマを見たりオオワシなど(遊覧船の)ほかにも見どころがあるので一定数は訪れる人がいる」(ニッポン旅行サービス 高谷悠希さん)
ウトロで50年近く漁師を続けてきた古坂彰彦さん(66)。
事故から半年後に飲食店をオープンしたが、ようやく客が戻ってきたという。
「去年あたりはインバウンドもあって戻ってきた」
「海外の人も来ているので増えているかな、日本人がもう少し増えてくると」(古坂さん)
2024年は、東南アジアからの客が多かったという。

地元の取り組みにより宿泊業にも明るい兆候
一方、宿泊業にも再生の兆しが―
2023年2月に斜里町にオープンしたホテル「BOTH」。
人気のランチのほか、薪のサウナ、斜里岳の伏流水をいかした水風呂などの施設も人気を集めている。
斜里町出身の支配人・丹羽慎さん(30)。
東京で勤めていたが、落ち込む観光を何とかしたいと13年ぶりに地元に戻ってきた。
「静かなマチになっていて寂しいなという思いもあったんですけど、マチの人たちとの取り組みの中でいろんな人に来てもらえるような努力をしたことでいま少しずつ盛り上がりを見せてきているので嬉しい」(BOTH 支配人 丹羽慎さん)

知床の魅力を次の世代へ―知床「再生」への努力
知床が世界遺産に登録されて2025年で20年。
年間200万人以上が訪れた活気がある時代を知る丹羽さんは、悲惨な事故の記憶とともに知床の魅力も次世代につないでいきたいとしている。
「若い世代に僕自身つないでいけるような、伝えていけるように頑張っていきたいですしその時の思いを忘れずに走り続けたい」
安全対策の強化に加え、インバウンドの受け入れも含めた観光の取り組み。
「知床の再生」を見据えた努力が続いている。
