4月15日は「遺言の日」。

葬儀や遺産相続などについて考えるいわゆる「終活」。

インターネットやスマートフォンが身近になった今、「デジタル終活」という新しい動きに注目が集まっている。

大切な人を亡くした後…あなたの身近にも起こりうるデジタルの世界での意外な落とし穴。

神戸市の男性(60代):いきなり弁護士から『支払いがないと差し押さえに入ります』というのが来て、ちょっと驚きの展開でした。

スマートフォンやインターネット上の情報。

いわゆる“デジタル遺品”を巡るトラブルが急増する中、注目を集めるデジタル終活とは―。

「デジタル終活」
「デジタル終活」
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■「デジタル遺品」に関するトラブル 8年間で相談件数がおよそ3倍に

「遺言の日」の15日、「遺言」にまつわる落語が披露されたのは、兵庫県で行われた相談会。

毎年4月15日は「良い遺言」の日。

参加者:終活っていうのは僕もきらいだったんでやってないけど家族から色々いわれて…。

(Q:「終活」をゆっくり進めていこうかなという感じ?)
参加者:ゆっくりって時間ないから早くせないかんでしょうね。

終活の中でも、いま特に注目を集めるのが「デジタル終活」。

スマホやパソコンなどに残ったデータなど「デジタル遺品」に関するトラブルが急増していて、この8年間で相談件数がおよそ3倍になっている。

大切な人を亡くしたあとに巻き込まれる、思わぬトラブル。

その実態とはー

8年間で相談件数がおよそ3倍に
8年間で相談件数がおよそ3倍に

■父親の葬儀後、“サブスク”が解約されず督促状が届く

神戸市の男性(60代):『支払いがないと差し押さえに入ります』というのが来て、驚きの展開でした。

ランナーが取材したのはおととし父親を亡くした、神戸市に住む60代の男性。

葬儀後に突然、父親のクレジットカードが「未払い」とする督促状が届いたという。

調べてみると、父親が生前に契約していた動画配信の定額サービスいわゆる“サブスク”が解約されていないことが判明。

督促状
督促状

■父親の死亡届を出してから退会が完了するまで5カ月要した

男性は、急いで解約しようとしたが…

神戸市の男性(60代):(父親の)名前、生年月日、IDを求められるんですけれども(中略)名前と生年月日だけじゃわからんって言われる。

「サブスク」などのサービスでは、解約時にIDやパスワードが必要となるケースも多く、男性は必死に探したが、手がかりは見つからなかった。

神戸市の男性(60代):遺品のノートとか、手紙とか見たんだけども、本人がサブスクの契約をしてること自体、気が付いてなかったみたいで何のメモもなかった。

結果的に、カードの支払いを止めて“強制退会”するという選択肢を選んだ男性。死亡届を出してから退会が完了するまで、約5カ月もの時間がかかりました。

神戸市の男性(60代):ログインIDの方が死亡届よりも上位にあるんですね。

請求書とかの書面は1カ所の決まった場所にまとめてあるとかそういう形のこと(対策)はあったけども、デジタルは全く無策でしたね。

神戸市の男性
神戸市の男性

■専門家によると、「トラブルは今後増えていく」

終活に詳しい伊勢田弁護士は、デジタル化が進むことでこうしたトラブルはさらに増えると指摘する。

「終活弁護士」伊勢田篤史さん:2024年から新NISAがスタートしてネット証券の口座開設増えたと思うんですが、ネット証券の所在がわからない、暗号資産のお持ちの方だったら暗号資産がわからないとこういったトラブルは今後増えていくと思います。

「デジタル遺品」が多くなった現代だからこそ、重要となる「デジタル終活」。どのように備えれば良いのか?

「終活弁護士」伊勢田篤史さん
「終活弁護士」伊勢田篤史さん

■生前に家族とIDパスワードを共有するほかに管理してくれるネット上のサービスも

吉原キャスター:自分でもどのサブスクに契約しているか分からなくなっちゃうのに、家族のIDやパスワードなどは把握していないですよね。

犬山紙子さん:(把握)していないですし、父のものも把握していないんですよ。どんなサブスクに入っているかすらも知らないので、ログインIDが死亡届よりも上位にくるって言われたら、打つ手が本当にない。どうしたらいいのっていう今不安です。

生前の対策でもっともシンプルなのが、生前に家族とIDパスワードを共有しておくことですが、話を切り出しにくく、なかなか難しいかなという感じもする。

そういった方は『スマホのスペアキー』というやり方も。デジタル遺品を考える会の古田代表によると、紙にIDなどを書いて修正テープを上から貼るとスクラッチカードのようになるので、硬貨などで削るとIDやパスワードなどを伝えられるというものだ。

もう一つがデジタルキーパーというネット上のサービス。有料で月額330円ほどのサービスで、まさかのときに備えて企業がIDやパスワードを管理してくれるそうだ。利用者に定期的に生存確認メールが届き、このメールに一定期間クリックなどのリアクションがなければ、家族などあらかじめ登録した相手にIDやパスワードが引き継がれるというもの。

デジタル終活
デジタル終活

■「亡くなったタイミングでアクセスできなくなる、などあるとパスワードを共有しやすい」

個人としても手は打てるということですが、サービスを提供する側も何か対応する必要があるのか。

大阪大学大学院 安田洋祐教授:例えばサブスクに関して言うと、自動更新されるところが結構問題なんですよね。なので、例えば本人が生きていても亡くなっていても、リアクションがない限り自動更新しないみたいな設計にしてもらえれば、亡くなったらもう同意しようがないので、自動的に止まることになりますし。

あとはパスワードを共有した時の懸念点で、支払い面に関しては家族と共有したいけれど、自分のメールやSNSなどの過去のメッセージを見られたんじゃないかということもあります。その場合にはそういったサービスが、亡くなったタイミングでアクセスできなくなる、あるいは過去のデータを消去するみたいなものがあると、少し安心して家族とパスワードを共有しやすくなるかもしれないです。今の時代ならではの取り組みが求められていると思います。

万が一のことを備えて家族と話をしておくということもこれから大切になってきそうだ。

(関西テレビ「newsランナー」2025年4月15日放送)

大阪大学大学院 安田洋祐教授
大阪大学大学院 安田洋祐教授
関西テレビ
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