アルコール依存症の怖さとは…

国内に100万人以上いるといわれるアルコール依存症の現状。
新型コロナウイルスによる影響で、相談が増えているというこの依存症の怖さを、経験者自身が語った。

仮名・トシさん(62):
普通通り、人と同じように(酒を)飲んでたわけですよね。どこで切り替わったかわからないけど、ずっと24時間飲みっぱなしになっちゃう。少しずつ、少しずつ

トシさんは、かつてアルコール依存症に苦しんだ経験がある。

仮名・トシさん(62):
24時間寝るくらいまで。寝るんですけど、2、3時間たつと起きるんですよ。また、ちょっと飲むんです。そんな状態が、ずっと続いていたわけですよ。自分ではやめたいんですけど、やめられないんですよね

長年、料理人として働いてきたが、いつの間にかアルコールに溺れ、気づいた時には仕事ができなくなっていて、身体はボロボロに。
5年前、家族にすすめられて行った病院で、アルコール依存症や肝硬変と診断された。

入退院を繰り返しているうちに、家族はバラバラに…

仮名・トシさん(62):
退院して、11日目にすぐ(病院に)戻ってきちゃった。11日間で飲んで戻ってきちゃった。その時に(妻から)離婚届が来て、それからですね。状況がどんどんまずいなと自分も思って

コロナで外に出られず… 受診者増える中での医療機関の取り組み

トシさんのように、依存症は自分の意志だけではどうにもならない精神的な障害だが、自分自身で気が付かない人も多く、周りの理解も必要だという。

瀬野川病院医師 KONUMA記念 依存とこころの研究所・加賀谷有行所長:
意思が弱いからアルコールを止められないんだとか、根性でアルコールをやめられるんだという考え方も、ちょっと間違っている方向かなと考えています

さらに、新型コロナウイルス感染拡大の影響がここにも。

瀬野川病院医師 KONUMA記念 依存とこころの研究所・加賀谷有行所長:
コロナで外に出られないようなストレスだとかで、自宅でも飲酒が止まらないという方が受診してくれるようになって、最近は患者さんが増えているかなと思っています

しかし、この依存症は、適切な治療や支援によって回復が可能だという。

医療機関では、どのような方法をとっているのか。
広島県の依存症治療拠点機関・瀬野川病院で実際に行われているプログラムの1つが、ワークブックを使って、依存症の特徴と回復方法について考える方法。

この日は、「アルコールを飲んでいる時に見られる自分の行動」をカウンセラーや、ほかの患者と一緒に振り返った。

患者:
昼夜逆転

カウンセラー:
生活リズムのパターンが変わってしまうことがあった

患者:
どうしても夜寝られないから、ついつい飲みがちになってしまって、量が増えてくるよね

本人が自分の状況に気付くことで、再発の予防につなげるのが狙い。

瀬野川病院医師 KONUMA記念依存とこころの研究所・加賀谷有行所長:
治療を一緒にしている仲間同士で語ったりし合うのが、治療的には良い効果を及ぼすと思っています。軽症の患者さんとしては断酒ではなく減酒の治療の薬も開発されて使えるようになりました。お酒を減らすことで進行を抑制しようという方向で、治療を試みてくれる患者さんもおられます

“仲間”と共に支え合う“居場所”も

一方、患者同士での支え合いの場も。
広島市南区に拠点を置く「広島マック」では、アルコールやギャンブルなどの依存のため社会生活が難しくなった人たちに「居場所」を提供している。

マックでは、ミーティングと呼ばれるグループワークで、みんなが顔を合わせ、過去の経験や今の思いを打ち明ける。

広島マックの利用者:
22歳の時にバイク事故に遭って、右腕に障害が残ったんです。その障害には痛みもついていて、それから自分の酒の飲み方っていうのは本当に段々と変わっていってしまいました

広島マックの利用者:
状態悪い時から、ここまで戻ったのは良かったのかなと思っています。だから、よく仲間が言ってくれたことで「一生飲めないと考えずに1日飲めない」っていうことを、これからも考えて生活していこうと思います

自身もアルコール依存症を経験した広島マック・小玉正平施設長:
自分のことを正直に話せる、人に言えなかったことを自分の中から出す。そこに新しい考え、それこそ気付きだったりとか、生き方を変えることだったりとか、生きる喜びを感じられるところがミーティングの効果じゃないかなと思います

マックでは、居住スペースも用意していて、共同で暮らしながら掃除や料理など、それぞれが、自分のできることをして社会復帰を目指す。

現在、施設の利用者は16人で、その半数がアルコール依存症。
多くの人は家族に勧められたり、病院に紹介されたりして、県の内外から、この場所へとたどり着いた。

運営スタッフも全員、依存症経験者。
かつてアルコール依存症と診断されたトシさんも、ここで仲間と出会い、お酒はもう4年以上、口にしていない。
現在は、スタッフとして食事づくりを担当している。

仮名・トシさん(62):
きょう、刺し身セットと天ぷら。18人前。仕事ができるという喜びを得ました。あのまんま行ってたら、多分何もできなかったですね

料理人だったトシさんが腕を振るうご飯を、みんなが楽しみにしている。

仮名・トシさん(62):
仲間がいるから仕事ができる。それはありますね

スタッフとして自分ができることをしながら、共に戦う仲間の姿を見ることが、今でも依存症の歯止めになるという。

瀬野川病院医師 KONUMA記念 依存とこころの研究所・加賀谷有行所長:
なかなか病気と認めたくないから病院にも来たくないという人も多いと思います。でも、治療という言葉じゃなくても、相談という言葉だけでもいいですから、早めに医療機関なり、マック等の自助グループでもいいですから、どこかに相談に行くというのが、早期治療でいい方向に向かうと思います

(テレビ新広島)