「値引き」と「ポイント付与」。あなたはどちらにお得感を感じるだろうか。

「小額の場合、『ポイント』のほうがお得に感じるのですが、実際は割引のほうがお得です」

そう教えてくれたのは、消費者行動論を専門とする名城大学経営学部教授の中川宏道さん。

人が買い物をする際、現金とポイントでは損得の感覚が異なってくるのだという。ポイントに振り回されないために知っておきたい心理的なメカニズムについて、詳しく聞いた。

ポイントをお得に感じる理由

1ポイント=1円で使える店で400円のものを買うとして、「10ポイントプレゼント」と「10円引き」と言われたら、どっちのほうがお得に感じるだろうか?

「どちらも金額的には同じですが、前者の方がお得だと感じる人が多いでしょう。その理由は、利益と損失に対する心理的な反応を数値化した『プロスペクト理論の価値関数』で説明できます。人は利益や損失の金額が大きくなるほど、心理的な反応が弱まる“感応度逓減(ていげん)性”といわれる傾向を見せるのです」

ひと口目が一番おいしく感じるのも人間の心理(画像はイメージ)
ひと口目が一番おいしく感じるのも人間の心理(画像はイメージ)
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例えば、おいしい料理を食べたとき、ひと口目もふた口目も同じ料理だが、ひと口目はひときわおいしく感じるもの。数を重ねるほど、心理的な反応=感動やインパクトは薄れていく。

「『プロスペクト理論の価値関数』から考えると、400円の損失が値引きによって390円の損失になるよりも、利益が0ポイントから10ポイントになるほうがインパクトが大きくなるため、お得に感じやすいのだといえます」

金額が多くなると逆転する

ただし、金額が大きくなるとインパクトは逆転するという。

プロスペクト理論の価値関数(中川宏道さん提供の資料から編集部作成)
プロスペクト理論の価値関数(中川宏道さん提供の資料から編集部作成)

基本的に、人は利益よりも損失により大きなインパクトを感じやすいからだ。100円得した場合のインパクトが「+1」とすると、100円損した場合のインパクトは「-2.5」になるといわれている。

「つまり、小額の場合は『ポイント付与』がお得に感じますが、高額になると『値引き』のほうがお得に感じるということになります」

ポイントは小額ほど貯めたくなる

「ポイント」と「値引き」に対する心理的な反応には、「ポイント」と「現金」に対して抱く感覚の違いも影響しているとのこと。