度重なる違法建築などが問題となり閉園が決まった札幌市の動物園・ノースサファリサッポロ。こうした中、動物たちの新たな飼育場所として静岡県富士宮市の施設が浮上し、地元からは困惑の声があがっている。
明らかになった違法建築の数々
北海道札幌市にある民間の動物園・ノースサファリサッポロ。
2005年のオープン以来、約150種類、500匹を超える動物を飼育してきた。
ワニが泳ぐ池の上を歩いたり、トラに直接餌をあげたりと動物たちとの距離の近さが話題となり、付いた呼び名は“日本一危険な動物園”。
市民や観光客に親しまれる一方、ノースサファリサッポロでは“ある違法行為”が横行していた。
FNNの情報公開請求によって開示された全554ページに及ぶ札幌市の内部文書に記されていたのはノースサファリサッポロにある違法建築物の数々。
ノースサファリサッポロは宅地や商業施設の開発が制限される市街化調整区域に位置しているが、開園から20年にわたり無許可で獣舎などの建築を行ってきた。
札幌市開発指導課の坪田修一 課長は「(過去に複数回)指導した際には『改善する』という回答をもらっているが、その後、建物が増えている。『ちょっと違うんじゃないの?』という認識がある。確信犯的にやっているので、悪質性の判断の部分では高く感じざるを得ない」と憤る。
市は開園前の2004年に無許可で工事が行われていることを確認し指導を行ったが、ノースサファリサッポロは応じることなくオープン。園内にある違法建築物は156棟にのぼる。
突如として発表された閉園
また、指導されてきた問題行為はこれだけに留まらない。
ノースサファリサッポロでは自治体の許可が必要な特定動物も無許可の状態で飼育していたことが判明。
さらにアザラシと一緒に宿泊できるプランをめぐっては「動物虐待ではないか?」といった苦情が寄せられたという。

こうした中、運営会社のサクセス観光は3月10日、突如としてノースサファリサッポロを9月末に閉園すると発表し、来園者も「9月までに動物の保護ができればいいけど、できなかった時にどうするのだろう」と動物たちの行く末を案じる。
浮上した動物たちの“移転先”
新たな受け入れ先として浮上しているのが色とりどりの花と共にフクロウやミミズクといった約30種類の動物たちと触れ合えることで多くの人に親しまれてきた富士宮市の富士花鳥園だ。

ここは経営状態の悪化などを理由に2025年1月から無期限の休園状態となっているが、サクセス観光が経営権を取得し、この場所を支店として登録。

この動きに同市の岩村恵美 市議は「ルールや必要な許可を無視し、動物の取り扱いにも疑問が残る事業者だなと思っている。札幌で行っていたようなことが“ここではできない”ということをしっかりと法に則って対応し、各部が連携して、共通認識を持って対応してもらいたい」と話し、須藤秀忠 市長も「札幌で法律違反をして、また富士宮に来てそんなことをされても困る」と困惑を隠せない。
その後、富士宮市はサクセス観光から具体的な事業計画が示されていないことを理由に、財産区の所有地にある富士花鳥園を受け入れ先として使用させる考えがないことを表明。
こうした動きが影響したのかサクセス観光が登記上、富士花鳥園のある場所に置いていた支店登録を3月5日付で廃止していたことがわかった。
富士宮市の担当者によるとサクセス観光から今度は「富士花鳥園の動物を移動させる」との話が出ているものの、これまでに具体的な場所やスケジュールは示されていないという。
さらに4月10日に行われた市長定例会見では、須藤秀忠 市長が同月初旬にサクセス観光側から
富士花鳥園の土地を所有する財産区に対して「3月末にすべての動物を移動させた」との連絡があったことを明かしたものの、中に入ることができないため本当に動物がいないのかわからないそうだ。
閉園まで半年。
ただ、いまだにノースサファリの今後はまったく見通せていない。
(テレビ静岡)