食の雑誌「dancyu」の元編集長・植野広生さんが求め続ける、ずっと食べ続けたい“日本一ふつうで美味しい”レシピ。
植野さんが紹介するのは「タンドリーチキン」。
東京・中野区の新井薬師前にあるスパイス料理とお酒が楽しめる「マロロガバワン」を訪れ、スパイスやヨーグルトで下味を付けた鶏肉を、タンドール窯で香ばしく焼きあげたインド発祥の料理を紹介。家のカレーが本格カレーになる店主おすすめのスパイスも教えてもらった。
住民から愛される商店街も残る街
「マロロガバワン」があるのは、東京中野区の新井薬師前駅。
「北側は建物が多く、静かな住宅街があったりします。南側は古くからやっているお店、もつ焼き店などいろいろあります」と植野さん。
中野区の北部に位置し、新宿まで西武新宿線で4駅の新井薬師前駅。

駅名の由来にもなった新井薬師は正式には新井山梅照院といい、1586年に創建。
街のシンボルとして多くの人が訪れている。その新井薬師の参道の目の前には老舗から個性的な新店まで、100店舗以上が軒を連ねる「薬師あいロード」商店街があり、地域の住民に寄り添った住みやすい街だ。
ワインに合う創作スパイス料理も人気
新井薬師前駅から徒歩7分の、住宅街の一角にたたずむのが「マロロガバワン」。
オープンキッチンを囲むカウンター席と奥にテーブル席の落ち着いた空間で、2020年の開店以来、個性豊かなスパイス料理と厳選されたお酒が楽しめると、地元で熱い支持を集める繁盛店だ。

店主の礒邊和敬さんは、カレーをはじめとしたインド料理を担当。妻・麻由さんはソムリエの知識を生かし、ワインに合うスパイス料理を創作している。

里芋をペースト状にし、塩やスパイスで味付けした「里芋のフムス」や、鯛と生野菜をスパイスで和えたサラダ、鯛のカチュンバルなど、知られざるスパイス料理との出会いもこの店ならではの醍醐味。
スパイスとワインのマリアージュを楽しみに、つい足を運んでしまうそんな魅力的な店だ。
タンドールで焼くタンドリーチキン
もともとカレーにハマったきっかけを、和敬さんは「小学校5年生ぐらいに、地元のお店で食べた“キーマカレー”が衝撃的に美味しくて…」と話す。
そんなマロロガバワンの仕込みは朝の9時からはじまる。
「スパイスの漬物、“玉ねぎのアチャール”」のための玉ねぎを切る麻由さん。一方の和敬さんは、ランチ用のタンドリーチキンを仕込んでいる。

このタンドリーチキンを焼く窯は「タンドール」と呼ばれ、インドなどで使われる粘土製のオーブン。
本場のタンドールは底に炭を置き、窯内を温めるが、ここでは底にある鉄板をガスの火で温めることで、中の温度を上げている。

窯内の温度は「350度くらい上がる。底が400度くらいまで。下の火が直接当たるわけではないので、ピザ窯に似ています」と和敬さんは話す。
店の壁には30種類ほどのスパイスがずらりと並ぶ。スタッフはスパイスの多さに驚くが、和敬さんは「香りや用途が違うので、いつの間にか覚えちゃいます」と笑う。

ここで、家でカレーを作る時のおすすめスパイスを聞くと、「甘い香りを出したかったら“シナモン”。辛くしたいならは玉ねぎを炒める時に、“ホールチリ”を一緒に入れる。すっきりした辛みなので口に残らない」と教えてくれた。

本日のお目当て、マロロガバワンの「タンドリーチキン」。
一口食べた植野さんは「本能を刺激する美味しさが詰まっている。お酒のつまみに最高」と絶賛。
マロロガバワン「タンドリーチキン」のレシピを紹介する。