東京の賛育会病院が3月31日に、いわゆる『赤ちゃんポスト』そして『内密出産』の受け入れを始めると発表した。国内の医療機関では熊本市の慈恵病院に次ぐ2例目の取り組み。慈恵病院の蓮田健理事長はこれまで緊急下にある母子のため、他の都道府県にも取り組みが広がることを願ってきたが、今回の賛育会病院の発表には「失望した」と述べた。

東京・賛育会病院がベビーバスケット

東京・墨田区にある賛育会病院は3月31日に都内で会見を開き、親が育てられない赤ちゃんを匿名でも預かる『いのちのバスケット・通称ベビーバスケット』、そして母親が病院の一部の担当者のみに身元を明かして出産する『内密出産』の開始を発表した。

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賛育会病院の賀藤均院長は「予期せぬ妊娠や孤立出産の悩みを抱える女性の増加や、嬰児の遺棄、または虐待死など痛ましい事件が後を絶ちません。本日3月31日午後1時より内密出産ならびに匿名での生後4週間以内の赤ちゃんの預け入れである、いわゆる〈ベビーバスケット〉の取り組みを開始します」と述べた。

賛育会病院は「これまでも複雑な事情を持つ妊婦や外国籍の人も含めた一定数の〈飛び込み出産〉などを受け入れてきた」としていて、東京都や墨田区とも連携し取り組むとしている。

内密出産費用の原則請求に「失望した」

一方、熊本市の慈恵病院・蓮田理事長は3月31日午後、会見を受けて「失礼ですが失望しました」と反応を示した。

蓮田理事長が述べたのは費用について。賛育会病院によると、内密出産にかかる費用は原則、女性側に請求する方針。一般的な出産費用は50万円程度とされている。

蓮田理事長は「日本では公費が使えませんので、私たちは病院の負担でさせてもらっています。〈それが当たり前〉と思っていました。そもそも内密出産の理念は赤ちゃんの命と健康の確保であり、それを担う病院は24時間365日の体制で費用のことは二の次。基本的にお金を払えない人がほとんどなので、お金は求めない、それが前提条件です。内密出産は休止していただくべきだと思います」と述べた。

慈恵病院の蓮田理事長は「賛育会病院は孤立した女性の立場を理解していない」と述べ、厳しく批判した。

日本での法制化に向け動きも

賛育会病院のいのちのバスケット、内密出産の取り組みは3月31日午後、開始された。熊本市の慈恵病院のこうのとりのゆりかごには、これまでの預け入れが179人、内密出産は47件という状況で、東京でも多くの件数になる可能性がある。

受け入れた子どもの処遇は東京都、それに墨田区とも連携して対応することになっていて、熊本の取り組みが参考とされたよう。

東京都は学識経験者などによる検証部会を設置し、賛育会の実施状況を検証する方針。また、三原じゅん子こども政策担当大臣は4月1日の閣議後の会見で赤ちゃんポストや内密出産に関し、「今年度、海外の法制度に関する事例研究の実施を予定している」と述べた。

日本での法制化へ向けた動きとなるか注目される。

(テレビ熊本)

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