パラ水泳・木村敬一選手、30歳(東京ガス所属)。

2歳の時に先天性疾患で全盲に。

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小学4年生で水泳を始め、高校3年生で北京大会に出場し、ロンドン大会では銀メダル1個と銅メダル1個、リオ大会では銀メダル2個と銅メダル2個のメダルを獲得。

しかし、木村選手は「金メダルにすごくこだわっていたし、4つ取らなくても金を取れれば良いと今でも思っている」と金メダルに対する熱い思いを明かす。

“自分が速いに決まっている”

そこで、2018年4月からリオ大会の金メダリストを育てたコーチが在籍しているアメリカ・ボルティモアのチームに所属。

「世界一になろうと思ったら、世界一になった人の練習をするのが手っ取り早い」と話し、アメリカで驚いたことについて「ホースで滝みたいに水をプールサイドから流して、しぶきがいっぱいかかったり、水が冷たくなったりすることで“もうすぐ壁だよ”と教えていて豪快だなと思った」と明かす。

アメリカの健康診断でも驚いたことがあったといい、「聴力検査で『あっち向いて』と言われ、壁の方を向いていたら、離れたところから検査員の人にめっちゃ小声で『右手挙げて』と言われた」と笑う。

そんな「雑だけど合理的」だという生活を通して、人としての成長をひとつずつ確認できたことが自信にもつながったという。

「スタート台に上がる時、根拠のない自信がついてきた。“自分が速いに決まっている”と思って泳いでいると速い」と話した。

アメリカに滞在した2年間で各種目のベストタイムを更新。2019年の世界選手権では、100メートルバタフライで金メダルを獲得した。

そして、2020年3月にアメリカから帰国。

来年の東京大会で日本中を盛り上げるため、「僕は金メダルを取ってハイパフォーマンスを出さないといけない」と決意を示し、「いろんな東京パラリンピックに対する僕の思いが達成されるんだろうな」と語った。

一瞬の勝負にすべてを

そんな木村選手を支えるのが、タッパーの寺西真人さん。

筑波大学附属盲学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)の元教師で、木村選手を中学時代から育成している。

中学3年生のころ、木村選手が初めての海外遠征でアメリカへ行った時のエピソードを明かしてくれた。

「白杖をついてまっすぐ行くと売店にお姉さんがいるから、水を1本買って来いと言ったら、『買ってきました!』と初々しい」

一方の木村選手は「覚えています。たぶん、僕が初めて外国人と話した瞬間です」と振り返る。

あれから15年が経ち、リオ大会で4個のメダルを取ったあと、アメリカで2年間の武者修行を積んできた木村選手の成長に、寺西さんは目を細める。

「2019年の暮れに僕がアメリカへ行って、カッコイイと思いました。通訳も全部してくれて、ご飯も食べさせてくれて、なんて立派なんだと思った」と語った。

視覚障がいのスイマーに対して、プールサイドからタッピング棒でターンやゴールの合図をする役割のタッパー。「選手の力を100%出す。彼が泳いでいるのを自分が泳いでいるつもりで、そのタイミングを計る」と話す。

かつての教え子であり、パラリンピックで日本人最多21個のメダルを獲得した河合純一さんが、わずか0.04秒差でメダルを逃した悔しい経験もあり、タイミングを追求し、木村選手とともに一瞬の勝負にすべてをかけているという。

そんな寺西さんを木村選手は、「タッピングに対する思い入れがすごいと思う」と話した。

寺西さんは最後のパラリンピックとなる東京大会に向けて、「彼は負けず嫌いなので、タイムよりも金メダルがほしいと思っている」と、木村選手の金メダルに対する思いを明かした。

(「パラ★DO!」毎週土曜、15時25分~※関東ローカル)
https://www.fujitv.co.jp/sports/parado/program/parado/index.html

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