先天性左手全指欠損という障がいを生まれつき持つ、パラテコンドーの太田渉子選手(ソフトバンク)、31歳。

2020年1月、東京パラリンピック新競技のテコンドーで代表内定を決めた。

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彼女がテコンドーを本格的に始めたのは2018年。わずか3年前だ。

2019年には世界選手権で世界ランキング1位の選手に勝利するなど、成長のスピードは規格外だった。

太田選手は「(師範に)『金メダルを取れる』と言っていただいているので、頂点を狙える可能性もあるのが魅力です」と話す。

強さの秘密はスキー競技

なぜ競技歴の浅い太田選手が、ここまで強い選手になれたのか。

その秘密は、子どもの頃に始めたスキー競技にあった。

太田選手は、スキー競技ではクロスカントリーなどで3度、パラリンピックに出場している。

2006年のトリノ大会ではバイアスロンで銅メダル、2010年のバンクーバー大会ではクロスカントリースキーで銀メダルを獲得。2014年のソチ大会では日本選手団の旗手も務めた。

スキー競技の経験について、太田選手は「小さい頃からかなりトレーニングを積んでいるので、基礎体力や持久力は、テコンドーをやっている他の選手の中でも強いと感じています」と自身の強みを明かす。

パラテコンドーは2分のラウンドを3回行う。6分間ほぼ休みなく蹴りを出し続けるため、スタミナが要求されるハードな競技だ。

そのため、スキーで培った持久力が大きな武器となり、試合終盤まで攻め続ける攻撃的な試合運びを可能にしている。

また、強い蹴りにもスキーが生きていることを「体幹が強いのは、強い蹴りにもつながっていると思います。雪上で培ったバランス感覚やトレーニングが生きている」と話す。

1年延期はプラスだった

パラテコンドーは、太田選手のように上肢障がいのある選手が「足技のみ」で戦う競技。上半身に取り付けられた相手の電子防具に、力強い蹴りを入れないと得点にならない。

太田選手の得意技は「カット」と呼ばれる前足での強い蹴り。しかし、世界の強豪選手のほとんどが、身長164センチの太田選手より体格が大きいため、一発の力強い蹴りだけでは通用しない。

だからこそ、伸ばしたいのは連続蹴りの技術だ。「相手選手の身長が高くて、距離があるとカット一発だけではポイントが取れない。連続蹴りにつなげられるような素早い動作を、次の動作に移すことを大切に練習しています」と明かした。

メダルのカギを握るのは、スキーで培った持久力とパワーだ。

パラリンピックが1年延期になったことを師範である小池隆仁さんは、「成長度合いが急激に上がってきているので、この延期はプラスだった」と前向きに捉えた。

「世の中大変な状況ですが、あと半年後に大会が迫ってきていて、少しずつ国際大会の予定も入ってきているので、ここからまた一つエンジンをかけて高みを目指していきたい」   

新型コロナウイルスの影響により、東京パラリンピック開催が不透明な状況であっても、太田選手は前に進み続ける。