3月18日に開幕した第97回選抜高等学校野球大会。5日目の22日は2年ぶり6回目の出場となる常葉大菊川(静岡)と3年ぶり7回目の出場となる聖光学院(福島)が対戦する。そこで、両校の“伝説的OB”にチームの特徴や初戦突破のカギなどを聞いた。

“ゲーム慣れ”した常葉大菊川

今年の常葉大菊川について解説してくれるのが同校在学時(2006年~2008年)に甲子園出場4回、うち優勝・1回、準優勝・1回、ベスト4・1回と輝かしい実績を誇る町田友潤さん。

今大会で同校を率いる石岡諒哉 監督の1学年後輩で、華麗な守備と小柄ながらもパンチ力のある打撃で甲子園を沸かせ、3年時には高校日本代表にも選ばれた。

テレビ中継の実況に「セカンドに打ってしまえば望みはありません」と言わしめた球際の強さは15年以上経った今でも色あせることなく多くの高校野球ファンの脳裏に焼き付いているだろう。

甲子園を湧かせた町田友潤さん
甲子園を湧かせた町田友潤さん
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町田さんによれば、今年のチームは「下級生の時から試合に出場している選手も多く、“ゲーム慣れ”している」という。

打線が活発で、昨秋の東海大会では3試合いずれも2桁安打を記録。

飛びぬけた長距離砲はいないものの下位打線の打者もしっかりとバットを振ることができ、1番から9番まで打線として機能しているため、「打って試合をひっくり返すことができる」と評価する。

さらに石岡監督が得意とする冬場のトレーニングや振り込みによって、スイングの力強さが増したそうだ。

一方、投手陣はタイプの異なる左腕が揃っていて、誰が先発しても試合を作る能力がある。経験が浅い部分もあるが、大会期間中に自信をつけることで「試合を重ねるごとに大きく成長する可能性を秘めている」と力を込めた。

注目は投手・捕手・二塁手

町田さんが注目しているのは佐藤大加良 選手、佐藤大介 投手、町田稔樹 捕手の3選手。

まず、自身と同じセカンドを守る佐藤選手については「走攻守にセンスのある動きが見られ、特にセカンドでのプレーに余分な力みがなくなってきており落ち着きのある守備になってきている。肩も強く、微妙なタイミングでのダブルプレーや中継プレーでアウトをしっかり取ることができる新時代のセカンド。ピッチャーとしても貴重な右腕で、投げても140キロ台中盤を記録するなどポテンシャルの高い選手」と話し、「間違いなくチームの中心選手であるので、打って、守って、走って、投げて、すべてにおいて結果を出すことも求めたい」と檄を飛ばした。

日本未来スポーツ振興協会・静岡支部長として野球教室などに携わっている町田さん
日本未来スポーツ振興協会・静岡支部長として野球教室などに携わっている町田さん

続いて佐藤投手については「新2年生ではあるもののバッティング、ピッチングともにスケールの大きな選手」と評した上で、「戦力としての期待はもちろんだが、今大会を経験して更に一回りも二回りも大きく育ってほしい」と期待を込める。

町田捕手は自身と同じ名字ということもあるが、「石岡監督が手塩にかけて育てた捕手」だという。

従来の野球に石岡イズムをプラス

前述の通り、町田さんは石岡監督と先輩・後輩関係にあることから現在も折を見て母校の練習に顔を出したり、公式戦や練習試合を観戦したりしているが、昨秋の戦いぶりについて「石岡監督が選手として甲子園を戦い抜いた“守備と走塁あってのバッティング”という野球に、自身が社会人野球で経験した1球の怖さや隙をみせないプレーをプラスした野球を目指して采配していると感じた」と振り返る。

町田さんの話では、石岡監督は高校時代、甲子園の大会期間中に試合前日深夜まで相手打者のDVDを何度も何度も繰り返し見て研究し、配球の組み立てをすべて頭に入れるなど徹底した準備をして試合に備えていたといい、「試合を読む、相手を読む力に長けているとともに、それを裏打ちする準備力がすごい。甲子園や都市対抗で日本一を経験したほか、捕手出身ということもあり“ここぞ”という場面での読みや嗅覚に優れている」と称える。

後半勝負に持ちこむことがカギ

常葉大菊川が初戦で対戦する聖光学院について、町田さんは「隙がなく投手力の高いチーム」と話し、それだけに「エラーや四球を与えず序盤は粘り強く戦い、後半勝負に持ちこむことがカギになる」と予想する。

その上で、18年ぶりの日本一を目指す後輩たちに「全国の高校球児が憧れる甲子園の舞台でプレーできる喜びを噛みしめて思う存分プレーしてほしい」とエールを送った。

聖光学院は“1点をもぎ取る野球”

対する今年の聖光学院について解説してくれるのが2007年夏の甲子園で東北勢として春夏通じて初の満塁ホームランを放った同校OB・渡辺侑也さんだ。

渡辺さんは同校在学時の3年春・夏に甲子園の土を踏み、町田さん同様、高校日本代表に選ばれている。

卒業後は早稲田大学に進学し、東京六大学野球で首位打者やベストナインを獲得したほか、社会人野球・鷺宮製作所では主将も務めた。

東北勢初の満塁弾を放った渡辺侑也さん
東北勢初の満塁弾を放った渡辺侑也さん

その渡辺さんが見た今年のチームの特徴は「1点をもぎ取る野球」。

大嶋哲平 投手を中心に丁寧なピッチングでアウトを重ねて失点を抑え、攻撃面では昨秋の公式戦で15盗塁、33犠打という数字に表れている通り、ランナーを確実に得点圏へと進め着実に1点を奪うスタイルだという。

渡辺さんのイチオシは菊地政善 選手

中でも渡辺さんイチオシは菊地政善 選手。昨夏の甲子園では2年生として唯一打線の中軸に座り、新チームになって以降も公式戦で15安打11打点と勝負強さが光る。

渡辺さんが見た菊地選手の長所は軸のブレない打撃フォームで、ボールを自分のポイントまで引き付けることができる点で、どんなボールに対しても対応できるのが強みだ。

このため、「菊地選手の前にいかにランナーをためられるかが得点できるか否かのポイントとなる」との見解を示す。

斎藤監督の采配は“伝統的な機動力野球”

渡辺さんは1999年からチームの指揮を執る斎藤智也 監督の教え子でもあるが、同監督の采配の特徴について「伝統的な機動力野球」と解説。

現在は会社員の傍らベースボール・アドバイザーとしても活動している
現在は会社員の傍らベースボール・アドバイザーとしても活動している

普段の練習から得点圏における走塁の意識を植え付けるとともに、セーフティスクイズやスクイズの技術を徹底的に磨くなど“打つ”“投げる”以外の細かな野球を鍛え上げ、「走塁とバントに関しては過去の甲子園でも常に得点源になっている」と話す。

初戦突破のカギは“ロースコア”

昨秋の東北大会では準々決勝の仙台育英戦、決勝の青森山田戦と強豪相手にいずれも1点差の接戦を制するなど今年は勝負強さに定評があるだけに、渡辺さんは「いかにロースコアの展開に持ち込めるか」を1回戦突破のカギにあげた。

昨秋に主戦を務めた大嶋投手は技巧派の左腕で、サイド気味のフォームから打たせて取るのが長所だが、痛打された場面ではストライクを欲しがるあまり打者に的を絞られていたことから、「大嶋投手らしく丁寧なボールの出し入れを心がけてほしい」と期待を寄せる。

その上で、「昨秋の明治神宮大会では初戦の東洋大姫路戦で5回コールド負けと悔しい思いをした。以降、練習グラウンドのスコアボードには0対10の得点板を貼り出し、常に悔しさを忘れない冬を過ごしてきた。一冬を越えて選手たちの成長を見られるのが楽しみ」と後輩たちの躍動が待ちきれない様子を見せた。

(テレビ静岡)

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