地方創生の大きなカギを握る若い世代。人口減少が進む新潟で若い世代の“リアルな声”をSNSで発信している男性がいる。定住人口ではなく、まずは交流人口や関係人口を増やそうという男性の思いに迫った。
“新潟県”県外の人が抱くイメージは?
豊かな自然や食・産業など全国に誇りたい文化が多くある新潟。

しかし、2024年に県内から県外に出た人の数は転入した人の数を約5800人上回り“転出超過”となるなど、人口の流出に歯止めがかかっていない。
県外から旅行で新潟を訪れていた人に話を聞くと、「日本酒がおいしい、お米がおいしいイメージがあって、新潟に来てみたいとずっと思っていた」「お酒のおいしいところとか、米どころとか」など“米どころ”としての印象が強いようだ。
悩み・モヤモヤ…“新潟の現状”を発信する男性
米どころとしてだけでない魅力をより多くの人に知ってもらうために重要となるのが“発信力”だ。

そこで立ち上がったのが、新潟市出身の後藤寛勝さん(30)。
SNSや動画投稿サイトなどで発信している『新潟のリアル』というコンテンツで、新潟市の公共交通機関や中心市街地の再開発など、新潟の現状を1分で伝えている。
その狙いについて、後藤さんは「僕は議論のハードルを下げたい。誰かが思っている悩みやモヤモヤは、一人が思っていたら100人、1000人、1万人思っている。それを言うところがない」と話す。

大学卒業後、東京の広告代理店に就職した後藤さん。
地方創生事業に携わり、様々な自治体と関わっていたが、新型コロナウイルスの感染拡大でその機会が激減。「地元・新潟のために何かできることはないか」と県出身者のオンラインコミュニティーを設立し、4年前にUターンした。
「田舎だからこそ、すごくコミュニティーが狭い。何かを決める時に一部の人たちだけで決めていくことが多くて、議論への参加のハードルがすごく高くなっている」
反響呼ぶ『新潟のリアル』 その制作現場に密着!
誰でも議論に参加できる空気をつくりたいと、2024年11月に始めたのが『新潟のリアル』だ。

2月7日までにYouTubeやInstagramなどで123万回再生され、反響を呼んでいる。
この日も「学生が卒業後も新潟に留まってくれるにはどうしたら良いのか」という悩みに対する解説動画を制作していた。

「新潟市における転出・転入数で最も動きがあるのは20~29歳。20~24歳は主に大学卒業の転出が大きく、転出超過数が約1000。一方、15~19歳は主に大学入学時にむしろ転入者が多くなっている」
行政のデータなどを参考にしていて難しい表現が多いため、実際に声に出しながら、誰にでも伝わるよう原稿を作成し、1分に収まるよう撮影を行う。
「新潟の課題は?」若者の“リアルな声”求め街へ
2時間ほどの撮影を終え、息つく間もなく街頭インタビューに向かう。

すると、『新潟のリアル』を見たことがあるという高校生に話を聞くことができた。
後藤寛勝さん:
新潟に関するモヤモヤや課題とか、もっとこうなったらいいのに…ということはある?
高校生:
みんなで集まる場所がもっと欲しい
後藤寛勝さん:
今は普段どこで集まっている?
高校生:
カラオケとか友達の家とか多い
春から県内の大学に進学する男性から聞かれたのは「集まる場所が欲しい」という声。
一方、静岡県から来たという土木工学専攻の大学生は、新潟の街について「よく言えば都会的な設備やインフラが整っているなと感じたが、逆に言えば人口以上の過剰な設備がかかっている。古町もそうだし、万代もそうだし、新潟駅前もそうだし、全てが完璧に揃っている」と、『人口に見合った街づくりをすべきでは』との意見が聞かれた。

世代が違う学生の声を聞いた後藤さん。
「若者向けの施策は市も県もあると思うが、聞かれた声は本当に思っていることだから、実際に話を聞くことが大事」
“魅力”よりも“課題”を発信「自分の役割に気付いて」
こうして声を聞いて回る理由について後藤さんは「本当は定住人口が増えたらいい。次は交流人口が増えたらいい。ただ、関係人口から交流人口にいくまでが難しい」とその狙いを話す。

そのため、まずは新潟に関わる人口を増やすため“魅力”よりも“課題”を発信すべきだと考えている。
「みんな自分の役割をすごく探している。会社の中でもそうだし、社会の中でもそう。役割に気付いてもらえるといいなと思っている。“大切な一人だよ”と。それに気付いてもらうには『新潟ってこんなところが良くて』とか『こんなに良いんです』と言うよりも『ここに困っている』とか『ここが実は足りていない』と発信するべきだと思う。もしかしたら東京にいる人で新潟のリアル見てくれた人が『転職して地元に戻ったらやれるかもな、ここで店出したらいけるかも』ということがすごく大事」
一人が抱えているモヤモヤが、よりよい街づくりに一役買うかもしれない。
(NST新潟総合テレビ)