2025年は昭和100年にあたる節目の年。
鳥取市の開湯100年の温泉で、市民に愛されながら、息長く営業を続ける銭湯「元湯温泉」の歩みから“長寿企業”の生き残りの秘けつを探った。
開湯100年「鳥取温泉」で創業
鳥取市にある「元湯温泉」は、2025年、創業100年を迎えた銭湯だ。
「元湯温泉」がある鳥取温泉は、全国でも珍しい、県庁所在地の繁華街に湧く温泉。
大正14(1925年)、当時は城下町のはずれで、周囲に田んぼしかなかった鳥取駅前に温泉が噴き出し、「元湯温泉」はその湯を引いて営業を始めた。
教師から転身 銭湯の看板を守る4代目
4代目の小谷靖之さんは、県内の中学校で教師をしていたが、20年ほど前、父から家業を引き継いだ。「教員の代わりは自分のほかにもいますけど、ここを継ぐのは自分しかいない」と当時の思いを振り返る。
ただ、看板を引き継いだ当時、すでに家庭には内風呂が普及、経営者の高齢化も進むなどして銭湯は衰退の一途だった。最盛期には、県内に70軒ほどあった組合加盟の銭湯は、今ではわずか6軒が残るだけだ。
全国でも珍しい温泉を引く銭湯
元湯温泉の浴場を案内してもらった。
大きな湯船には、鳥取温泉の源泉がそのまま注がれている。
温泉を引く銭湯は、全国でも珍しいそうだが、これが「元湯温泉」が今も営業を続けられる要因の1つだという。
湯の温度は42~43℃。加温の必要がなく、燃料代の高騰も打撃にはなっていないそうだ。
“利用客ファースト”で改善重ね客足回復
また、小谷さんは、家業を引き継ぐと、施設の建て替えを決断。内装、外装を一新した。
その際に気を配ったのは女性客が安心して利用できる環境だ。
それまで、男湯も女湯も番台と脱衣所の間に視界を遮るものはなかったが、女湯には、新たに仕切りを設けた。
また、常連客の声をきっかけに、シャワーを全面改修。
約1400万円をかけて配管をすべて取り換え、温泉から水道水に切り替えて水圧を高め、使いやすくした。
こうした「利用客ファースト」の改善を重ねたことで、客足も回復。
今では1日平均約200人が来場、毎日、営業開始とともに次々と客が訪れる。
日々進化 “交流の場”銭湯を守る
小谷さんは、「いろんな人が集まって、裸になって、若い人もお年寄りの人も交わることができる空間が銭湯の魅力だと思うので、これからもいろんな人に来てほしい」と話す。
誕生から100年、今も市民に愛され続ける温泉の銭湯。
変わらぬ温もりの裏側で、「利用者ファースト」を目指し、日々、進化を続けていた。
(TSKさんいん中央テレビ)