メキシコとカナダからの輸入品に対する関税を25%へと引き上げるとともに中国からの輸入品への関税を上乗せしたアメリカのトランプ大統領。さらに自動車に対して25%の関税を課す考えも打ち出していて、関連する企業は気をもんでいる。

世界が“トランプ関税”に揺れる

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アメリカメディアによると、3月4日、メキシコとカナダに対する輸入関税を25%にすると共に中国からの輸入品にかけている関税を10%引き上げたトランプ大統領。

こうした動きに日本政府も警戒感を強め、武藤容治 経産相は「国会の許しが得られれば私自身も早期に渡米し、日本と米国の国益の相互がウィンウィンになるよう協議をしていくべく調整している」と話した。

走行中の自動車(資料)
走行中の自動車(資料)

さらにトランプ大統領が打ち出しているのが輸入自動車に対する25%の関税だ。

日本自動車工業会によると、2023年1年間で日本からアメリカに輸出された車は約148万台あり、トランプ関税の日本への影響も大いに懸念される。

地方にも影響の波

浜口ウレタン外観(浜松市)
浜口ウレタン外観(浜松市)

ものづくりの街、静岡県浜松市周辺は自動車関連の企業も多く、対応を模索しているようだ。

浜松市中央区西山町にある「浜口ウレタン」。

ここでは自動車部品のシート、ヘッドレスト、アームレストなどの製品を作っている。

2025年で創業からちょうど40年を迎えたウレタン加工のメーカーで、自動車メーカーの依頼を受けて作る部品が売り上げ全体に占める割合が半分以上となっている。

そのため、アメリカで輸入車への追加関税措置が発動された場合について浜口社長は「(アメリカへの)輸出車が減る分だけ、うちも生産量が減ると考えている。世界の状況というのは大きなものだが、私たちのような小さな会社にも早い時期に影響が出る」と見通す。

さらに、昨今の電気代高騰も大きな負担となっていたため「車への依存度を減らす方向で考えている」と悩み抜いた末に新たな一歩を踏み出すという。

人命救助用ボート
人命救助用ボート

検討を進めているのが防災分野への進出で、硬質ウレタンを活かした耐久性が高い人命救助用のボートを製造するなど技術力の高さを売りにした仕事にシフトチェンジしていく方針だ。

浜口社長は「手間暇がかかる製品を大手はやりたがらないため、そういうものを手掛けていった方が、単価的にも(利益が)取れる。大手がやれないものをやれるというのは大きな強み」と意気込む。

専門家は対応の難しさ指摘

一方、しんきん経済研究所・堀崎慎一 理事はメキシコとカナダに対する関税について県西部地域も他人事ではないと考えていて、「トヨタ・ホンダ・日産がメキシコに工場をつくってアメリカに輸出していて、静岡県西部地域には下請けの会社も結構あるので、生産に影響が生じる可能性はある」と警戒感を強める。

雑踏(資料)
雑踏(資料)

生産への影響は当然のことながら雇用に直結するほか、追加関税によって予想されるのがさらなる円安。

ただ、アメリカ国内での物価高にもつながるため、“トランプ関税”がいつまで続くのかは不透明という側面もある。

堀崎理事は「単なるディール(取引)で言っているだけかもしれないし、アメリカにとっての悪影響というのも当然わかっているはず。そのため、将来を予想してなにか手を打つというのも今はなかなかしづらい」と話す。

浜口ウレタン社内
浜口ウレタン社内

世界を翻弄するトランプ大統領。先行きはまったく見通すことができず、関係者がやきもきする日々はしばらく続きそうだ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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