岩手・大船渡市の大規模な山林火災がいまだ鎮火のめどが立たない中で、SNSでは「エネルギー兵器で焼き払っている。スマートシティー化のため計画通りにやっている」などといったデマとされる情報が拡散されている。
「エネルギー兵器で焼き払っている」SNSでデマ拡散
平成以降、国内最大の林野火災となった山火事は、3日で発生から6日目となった。これまでは、出火元とされる赤崎町合足(あったり)地区の東側で燃え広がっていたが、現在は南西方向へ延焼しており、市は外口(そとぐち)地区で建物への延焼を確認したと発表した。

大船渡市では、3日まで14日連続で乾燥注意報が発表されており、火が燃え広がりやすい状態が続いている。
大船渡市盛町では、避難指示エリアに住む中学3年の生徒達が学習会を行っていた。

参加した中学生:
(高校受験が)3月5日にあるので、今日含めた2日しか勉強できる期間がないですけど、少しでも落ち着いて問題に取り組めるように。
参加した中学生:
不安なことも続くと思うんですけど、春には友達と支え合いながらこの地域を、大変なんですけど復興を手伝っていきたい。

そんな中、今回の山火事についてSNSでは、「エネルギー兵器で焼き払っている。スマートシティー化のため計画通りにやっている」「山火事は太陽光パネルを敷き詰める場所を確保するため」などの情報が拡散されていた。書き込みの中には、100万回以上閲覧されているものもある。
インターネット上の偽情報や誤情報の対策を行う、日本ファクトチェックセンターの古田大輔編集長に、このような書き込みは事実か聞いた。

日本ファクトチェックセンター・古田大輔編集長:
災害の時に広がりがちな陰謀論であると言える。「スマートシティー化のため」「人為的なもの」と言っている証拠は何なのか、何の根拠があるのかが全く示されていない。
SNSで拡散されているデマとされる情報を被災地の方はどう感じているのか。大船渡市の中学校で避難生活を送っている方に話を聞いた。
避難生活を送る人(80代):
そういう情報を流すのは、私から言えばばかげた話。でたらめな情報を流した人はどういう心境でいるのか、私には考えられない。
避難生活を送る人(60代):
私はSNSを信じてます。
――“レーザー兵器”は?
あり得ないと思う。
災害直後SNSに“ウソ情報”飛び交う…逮捕者も
過去にも、災害時にデマ情報がSNSに投稿される事態があった。

2016年に発生した熊本地震の直後には、「地震のせいでうちの近くの動物園からライオン放たれたんだが」とSNSに書き込みを行い、動物園の業務を妨害したとして、当時20歳の会社員の男が逮捕されている。

また、2024年の能登半島地震では、SNSに住所を載せたウソの救助要請もあり、警察が出動する事態になった。
災害時にデマ情報が出回るのは何故なのか、古田さんに聞いた。

日本ファクトチェックセンター・古田大輔編集長:
災害が発生すると、災害が大きければ大きいほど注目度が高まる。被災者・関係者の人数も増えるし、「いま現場はどうなっているんだ」と確認する人は、日本中でニュースになったので見てしまう。
その中に「実は原因はこうなんだ」「そこは今被害を受けているんだ」のような情報が投げ込まれてしまうと、みんなが思わず見てしまう。「これは重要な情報を知ってしまった」と拡散する人たちも出てくる。逆に「まだ確認が取れていないじゃないか」と否定したい人たちがコメントする事で、情報の認知がSNS上で伸びてしまうこともある。

東京・銀座にある岩手県のアンテナショップに募金箱が設置されるなど、被災地を支援しようという動きも出ている。
そんな中で拡散されるデマ。SNSは災害時の情報共有にも役立つ便利なツールだが、間違った情報を善意から拡散してしまい、混乱が大きくなる場合もあると専門家は指摘する。情報の扱いは慎重に行うことが必要だ。
(「イット!」3月3日放送より)