2024年12月に本格稼働したTSMCの子会社・JASMの第1工場をめぐり、心配される地下水位や排水の水質について、熊本県は2月27日にいずれも稼働前後で変化は見られないと明らかにした。また、熊本県は阿蘇地域の地下水涵養を進めるため、新たな基金を創る方針だ。
JASM第1工場稼働前後で変化なし
熊本県は2月27日に地下水保全推進本部会議を開き、地下水に関する各部局の取り組み状況などを報告した。

熊本県は現在、セミコンテクノパーク内と熊本市内の2カ所の観測井戸で測定した地下水位を、リアルタイムで発信していて、JASMの第1工場が本格稼働した2024年12月以降、2カ所の井戸ともに現状で地下水位に大きな変化は見られないとしている。

一方、工場からの排水を処理する熊本北部浄化センターの水質データでも、水質汚濁防止法に定められた43項目全てで基準値以下となり、熊本県独自で検査しているPFOS、PFOAといった有機フッ素化合物の値も国の指針値を下回り、「稼働前後で変化は見られない」と明らかにした。

木村知事は「非常にいい報告が県民にできた。しかし、これからも工場が増えていく可能性もあるし、また影響が後から出てくる可能性がないわけではない。しっかりこれからも分析を続けて、県民に向けた情報を的確に発信していきたい」と、県民の不安に応えるために継続調査と情報公開を指示した。
阿蘇の草原生かした地下水保全に基金創設
また熊本県は、阿蘇地域の地下水涵養を進めるため、企業や自治体、住民などからの寄付を原資とする、新たな基金を創設すると発表。野焼きや防火帯づくりなど、草原を維持して阿蘇の地下水を守る活動に使用するとしている。

熊本県は、1万円の寄付で約1600平方メートルの草原が保全され、約4000立方メートルの水源涵養効果が得られると想定。これらを基に、寄付した自治体や企業などに保全できた草原の面積と地下水涵養効果を記載した『貢献証書』を発行し、イメージアップに活用してもらいたいとしている。

寄付の受け付けは2025年度前半にスタートし、2026年度から本格運用を目指すという。
産学金6者が地下水保全の取り組みへ
一方、地下水保全に向けては民間企業や大学、銀行が連携し、新たな取り組み『熊本ウォーターポジティブ・アクション』を始めることが分かった。

このアクションは、熊本県立大学、熊本大学、サントリーホールディングス、肥後銀行、日本政策投資銀行、MS&ADインシュアランスグループホールディングスの産学金6者が協働して行うもの。

熊本地域では、半導体関連企業の集積に伴い水需要が増大し、地下水の減少などが懸念されている。

こうした中、6者は、雨庭などグリーンインフラの導入による水循環の保全『ウォーターポジティブ』と自然環境の再生・保全『ネイチャーポジティブ』を地域全体で推進。また、多くの事業者や市民が参加できる仕組みを構築するとしている。

6者は3月20日、熊本市中央区の肥後銀行本店でキックオフのイベントを開催。木村知事や大西熊本市長ら立ち会いの下、アクション始動宣言などを行う予定だ。
(テレビ熊本)