トヨタグループは、日本の音楽産業を支援するプロジェクトを発表し、海外拠点の活用やイベント支援を行う。
さらに、新アリーナの活用や教育プログラムの提供も計画している。
グローバル企業の支援が、日本の音楽の国際的な存在感を高める可能性があると、専門家は評価している。

トヨタグループが日本の音楽産業と連携を発表

「日本の音楽が世界をドライブする」。
トヨタグループが音楽産業を支援する。

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25日、日本の主要音楽団体5つからなるCEIPA(セイパ)と、トヨタグループが開いた共同会見。

トヨタグループ・豊田章男代表:
車をもっとエモーショナルなものにしたい。私たちトヨタは、音楽から学ぶことはまだまだたくさんある。日本のエンタメがもっと世界に認められるようなものになるために、何かお手伝いをさせていただければと考えております。

日本の音楽産業のグローバル化や持続的な成長支援を推進するプロジェクト「MUSIC WAY PROJECT」を始動すると発表した。

「日本の音楽が世界をドライブする」を合言葉に、音楽で世界に挑戦する人たちのための「人づくり」と「場づくり」を支援。
トヨタグループが海外に持つ拠点と連携し、海外活動の足がかりとなるサポートを行う。

3月には、アメリカ・ロサンゼルスで、世界の音楽シーンで注目を集める「Ado」・「新しい学校のリーダーズ」・「YOASOBI」が出演する音楽イベント「matsuri '25 : Japanese Music Experience LOS ANGELES」の開催を支援する。

このほか、東京・お台場エリアで2025年秋開業予定の「TOYOTA ARENA TOKYO(トヨタアリーナトーキョー)」の活用や、国内の大学と連携した学生向けの講座、業界の若手人材に向けたオンライン講座などを行うとしている。

トヨタグループ・豊田章男代表:
“モビリティ”というものと、音楽とは親和性が強い。だからこの連携にかけてみたい。音楽を付与することで、その景色もその動きもまったく違うものになると思う。モビリティに新しいストーリーと、新しい価値を与えるというふうに思う。

車が“移動するエンタメ空間”へ進化する自動運転の時代

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
ーー自動車メーカーによる音楽産業のサポート、どうご覧になりますか?

一橋ビジネススクール・鈴木智子教授:
自動運転技術が進化し、人々が運転から解放される日も近い将来のようです。そうなったとき、人々が車による移動の時間をどう過ごすか。再定義する必要があります。

その可能性の1つが、自動車をエンタメ空間にすることです。

堤キャスター:
ーー具体的には、どうなっていくのでしょうか?

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
これまで自動車メーカーは、車という移動手段を提供してきました。
それが自動運転の進化により、車の中で音楽や映画などのコンテンツを提供し、運転しない時間をどう楽しく過ごすかを提供するビジネスに変わるかもしれません。

豊田章男代表の、「車をもっとエモーショナルなものにしたい」という話は大変象徴的です。これからトヨタが音楽との連携を深めることで、新しいビジネスの可能性を探ることができるのかもしれません。

堤キャスター:
ーー今回の試みをきっかけに、もっと世界を目指せるようになっていくといいですよね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
世界のコンテンツ市場は135兆円以上あり、半導体産業よりも大きなマーケットになっています。アニメ、そして音楽などのコンテンツについて、日本の独自性は世界で高く評価されています。

この強みを、グローバルブランドであるトヨタが支援することで、日本のプレゼンスが世界で高まることに、つながるかもしれません。

日本の文化を支えた民間の力で音楽を世界へ

堤キャスター:
ーープロジェクトの行方を注視していきたいですね。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
芸術が花開くのに、スポンサーは必須です。韓国の音楽のグローバルヒットの影には、政府の後押しがありました。

日本の場合、民間のビジネスが文化の支援者であったケースが多いようです。例えば、大河ドラマで話題の江戸時代の出版王・蔦屋重三郎のプロデュースによって、江戸の文化が成熟しています。

蔦屋重三郎が歌麿や写楽を見いだし、浮世絵を世界に誇る日本の芸術にしたように、トヨタの支援によって、若い音楽の才能がグローバルで花開くことを期待したいです。

堤キャスター:
グローバル企業のサポートは、人を育て、場所を作る大きな力になるはずです。
日本の多くの才能が、世界で挑戦するきっかけになっていくといいですね。
(「Live News α」2月25日放送分より)

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